竹中労さんの思い出(20)

 

 またまた大きく間が空いてしまいました。一応別れの音楽会をもって一区切りという形で考えているので、もう一踏ん張りなのですが。前回はいよいよ開演というところまで書いたのですが、コンサートとしては二本立てで最初は『たま』のステージ。そして後日CDになった琉球フェスティバルという形になっていました。当日私は裏にいたので表がどうなっていたのか後で話を聞いたのですが、当日入り口付近でビラをまいていた人がいたらしいですね。労さん個人としての遺志というものはあるにしても、未だ想いを持つ多くの人がいるのですから、やはり何かやることが必要だったと思いますし、当日も多くの人たちが訪れてくれたのだと思います。当時のプログラムに、『たま』に向けたメッセージとして『俺のことを忘れろ』というメッセージが載っていますが、実際、忘れるぐらいでないとだめだと言うことはわかっているのですが、未だにこんな文章を私も書いています。

 ここでは、一時社会現象までになった『たま』のことについて書いてみようと思います。当日の第一部は、彼らのミニコンサートであったことは述べましたが、彼らは淡々と曲目をこなすだけで、とりたてて壇上でのコメントはありませんでした。それが彼らなりの贈る言葉だったのだと想像しますが、当時のあまりの人気に本人たちもナーバスになっていということもあったのでしょう。確かに、あの当時の喧噪ぶりはちょっと異常という感じがありました。なにしろ、彼らの楽屋にはおいそれと入ることはできませんでしたし、結局彼らの姿をステージ以外でまともに見たのは、出番前に呼びに行ったときだけだったですから。また、彼らが文書で出したマスコミ用のコメントはいかにも素っ気ないものでしたし。

 思えば、彼らの出現は現在へと続く日本の音楽界にとっては希有の出来事だったと思います。彼らの亜流は出ましたがそれが主流とはならず、ヒットしている音楽の状況も、彼らのようなバンドがナンバーワンを取るようなことはありません。彼らの主張というのは、実は髪の毛を逆立てたヘビメタ(懐かしい響き(^^;))よりも遙かに過激であったのではないでしょうか。労さんが肩入れしていったのにも、その辺に理由があったのではと私は思っているのですが。ところで昨年、昨年天皇在位10周年とか言うコンサートで演奏したのは、過去に髪の毛を逆立てていた人でしたね。別にそう言うことが悪いと言っているのではないのですが、体制側にすり寄っていくような音楽というのは、その高貴さと引き替えに、言いたいことをオブラートに包んで捨てることを余儀なくされる気がして、作家側の本音が私には聞こえてこないのですね。ポップスもドラマも、自分たちの身近な一瞬を切り取ったものがヒットしている現代、高貴だろうと何だろうと、そうしたイメージの世界に多くの人を引きずり込んだ人たちが巨万の富を得るという図式に変わりはありません。となると明らかに作家側は聴衆や体制(こういうとかなり固いような気がしますが、今の社会全体の風潮という風に捕らえると理解しやすいかもしれません)に擦り寄る形でヒット曲を仕上げていくわけで、アーティストの本意はどこにあるのかと私などは考えざるを得ません。それに比べて、その当時の『たま』は、ヒット曲をさまざまなマーケティングによって作り出したのではなくて、普段からやっている曲をテレビの前でも同じように歌ったに過ぎません。そんな『たま』が、一時でもヒットチャートの一位を占めることができたのは、とても痛快な出来事でした。

 その後、たまは4人から3人になってしまいました。レコード会社も自分たちの自主制作という形に移りました。労さんが『たまの本』で書いているように、世紀末に現れた一過性タレントとしての道をたどってしまった感もありますが、もともと彼らとしてはナンバーワンヒットを出すような形での音楽活動する気などなかったことでしょう。それを無理矢理表舞台に引っぱり出し(結局その年の紅白歌合戦にも出てしまったのですから)、なおかつ、多くの人の共感も引き出したのは、労さんの魔力というかなんというか。デビュー前からのプロジェクトに関わり、戦略的にブームを企む仕掛人とも違います。勝手にファンであることを宣言し、勝手に応援することでいつの間にか『たま』だけでなく、マスコミや多くの関係する人々、最後には私のような全く『たま』を知らなかった人まで自分のペースに引き込んでしまう。これが革命家としての真骨頂でなくてなんでしょうか。別れの音楽会での『たま』の演奏は、ゆっくりと流れていきましたが、同時にとんでもなく過激な演奏でもありました。ご覧になれなかった方のために、当日演奏された曲目を参考までに紹介しておきましょう。(2000.3.27)

 

らんちう

鐘の歌

おなかパンパン

カニバル

こわれた

マリンバ

おやすみいのしし

ばいばいばく


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