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スーパーモーニング

 イソップ寓話に「アリとキリギリス」という話があります。冬に備えてせっせと働きながら食料を貯蔵することで食べ物のない冬に備えたアリと、夏の間に食料の調達を怠ったために冬にひどい目にあったキリギリスの対比が人間社会を風刺しているといえばご納得していただけるのではないでしょうか。しかし、本日の当番組の中でテレビ朝日の玉川記者が強烈に貯蓄税(番組内で例示されていたのは、年間の平均貯蓄額が1千万以上について2%)を薦めているのを見て、複雑な心境になった次第です。貯蓄税の話をしていたのは、クレディスイス証券の白川氏でした。白川氏にとっては、自社の利益のためにはできるだけ使われないお金が世間に出回った方がいいわけです。ある意味では利害関係者の口から出た意見を肯定することにもなるわけで、イソップ寓話のアリのように、爪に灯をともすようにして老後の資金として貯めた事実を真っ向から否定しているようで、その番組の進め方に違和感を感じてしまったのでした。続き

 そもそも、日本ではなぜ貯蓄額が多いのか考えてみましょう。年齢層に関係なく、いまだにクレジットカードを使っての買い物を嫌う人がいます。できるだけ借金をせずに大きな買い物をするためには、必然的に毎月少しずつでも貯金をするということが当たり前に行なわれてきました。アメリカのように、貯蓄を全くしないでツケで物を買いまくるような生活をしていて、収入の道が途絶えたらどうなるのかということを日本では気にする人が多いということも言えるでしょう。加えて、昨今の政府の財政逼迫という報道により、公的なセーフティネットが機能しなくなるということを多くの人たちが恐れています。そうなると、自分の身は自分で守るしかありません。そうしたところに貯蓄税が投入されるということになれば、老後に備えて生活資金を貯蓄しておいた人たちの毎年の生活費は確実に目減りすることになります。実直で真面目に働いて、その努力の結果を掠め取るというのですから、キリギリス型の生活を政府が優遇することにもなりかねません。正直者が莫迦を見る社会が日本の将来だと思うとやっていられないと私は思うのですが。

 貯蓄税云々を議論すること自体、私は悪くないと思っています。ただ、全く収入の当てがなくなり、老後の資金も住む部屋もないような人に対するセーフティネットを整備してからの話だと思います。つまり、普通の人たちが貯蓄しなくても生活していける社会基盤作りを全く議論しないままお金を取ることだけを提案してもしようがないと言うことです。次週は貯蓄税のディメリットをコメンテーターに考えてきてもらってさらに議論をするということなのですが、どうも最初から貯蓄税の実現ありきで話を進めているような気もします。この点については来週にまた確認してみたいですね。

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