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プレミアム10「赤塚不二夫なのだ!!」 

 赤塚不二夫氏のテレビ特集は、恐らく先日デジタルハイビジョン放送でやった特集の焼き直しだろうと思われますが、昨日の日記に書いた通り、ハイビジョンのアナログ放送が停止された今となっては、いくら地上波の番組で告知があったとしても、デジタル放送のハードがないため、番組自体を見ることができないのですね。ブログの分類でもBS9とあるものは現在BSデジタルのみで見られるものとなっていますので、残念ながらもう見られないかなと思っていたところ、地上波での放送があるということで楽しみにしていました。

 結論から言うと、大学教授による分析や、最後にオリジナルアニメを制作した松尾スズキ氏を含め、赤塚氏のギャグを解説しても何にも面白くないということだけははっきりわかりました(^^;)。私はマンガというものを教養としてではなく、娯楽としてめいっぱい楽しんできたということもあり、赤塚氏が生み出した新しいギャグマンガの形は何が斬新かとか、氏の作り出したキャラクターであるニャロメの発するメッセージとか、そんな堅苦しい物言いを発信することで赤塚氏の面白さが番組を通して伝わっていくのか疑問を持ちながら見ていたら、そのままフェイドアウトするように番組も終了してしまいました。赤塚氏ご本人は、ご自身のマンガに関してどのように思っていたのでしょうか。続き

 私がおこがましくも赤塚不二夫さんのマンガを語る上で、もう一人挙げておきたい漫画家の方がいます。赤塚氏も子供の頃に読んで虜になったという、ギャグマンガ家の杉浦茂さんです。私はたまたま、杉浦さんの代表作「猿飛佐助」が講談社漫画文庫で復刻された際、偶然それを友人が持っていたのを読ませてもらい、おかげで杉浦さんの作品を赤塚氏のマンガと一緒に楽しむことができたのですが、講談社漫画文庫の巻末に掲載されていた赤塚氏と長谷邦夫氏との対談に強烈な印象を持っています。そして、改めて古い本をひっぱり出してきて、今これを書いている次第です(^^;)。今回の番組では赤塚マンガの象徴として登場した「レレレのおじさん」というのは、彼の台詞である「レレレ」から来ているわけですが、実はこの台詞回しは杉浦マンガに多用されている効果の雰囲気を出したいということで創作されたものだとその由来を明らかにされています。赤塚氏曰く、

「なんとか杉浦先生のような感じでかきたい、そんな杉浦先生のおもしろさを読者に思い出してもらいたいという気持ちでかいたわけさ」(以上 講談社漫画文庫「猿飛佐助(上)」解説より引用)

 さらに杉浦氏のマンガについて若い人を中心に再評価されているという長谷氏の発言に対して、

「先生の漫画を読んだり、知っていることが、ひとつ漫画マニアの教養みたいなことになって欲しくはないと思うんだよ、おれは」(同 引用)

 とやんわり釘を差し、最後に長谷氏が「ほんとうの意味でナンセンスに近づいていて……」と分析したのに対し、

「ホラ、すぐナンセンスなんて、つまらない言葉がでる。漫画なんだ。先生の作品は真実、漫画なんだ。それ以上いうことはない。これでいいのだ!」(同 引用)

 と一喝して(^^;)、対談は終了しています。ここまで挙げた引用文の中で、「杉浦(茂)先生」を「赤塚不二夫先生」に入れ替えてみましょう。はっきり言って、この番組を見て残った違和感を払拭してくれたのが上記の赤塚氏自身が述べた言葉だったわけです。

 こんな番組を作ることで赤塚不二夫の漫画をマニアの教養の中に埋もれさせるのではなく、何よりもギャグマンガに飢えている子供たちに読んで笑ってもらいたいと私は思います。これから出てくるであろう作家の方々も、ぜひこんな赤塚マンガのエッセンスを伝えていく気概を持っていただきたいものだと思います。

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