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ETV特集 「木村伊兵衛の13万コマ・よみがえる昭和の記憶」

 ここ数年のうちに、それまで主流だったフィルムカメラというのはカメラ店においても売場の隅に追いやられ、初めて買うカメラがデジタル一眼レフというのも珍しくなくなってきています。新しいカメラはピントも露出も、被写体との距離も考えることもなく、気に入ったものをモニタの中に入れ、シャッターを押せばしっかりと写ります。カメラ自体の大きさもかなり小さくなり、今売れ筋の一眼レフデジカメは手の中にすっぽりと収まるサイズになっています。続き

 特にアマチュアの人にとってはいい時代になったものですが、しかし今回この番組で紹介された木村伊兵衛さんのような写真を今の私たちが撮れるのかというと、そういうものではないというのが不思議なところです。今の世の中、一般の人であっても無許可で撮って発表すると肖像権の侵害を言われるかも知れないということは置いておいても、あれだけ自然に、しかもカメラ目線でない風景に同化した人物写真を撮るには達人の技が必要です。

 番組では、「居合い」と表現していましたが、小さなカメラをさっと取り出して一瞬のうちに撮ってしまうというのは、素人が写真を撮る上でも参考になる事だと思います。そして、実に多くのコマ撮りの中でやっといいものが出てくることも、素人にとっては励みになるでしょう。というか、素人ほどコマ数を撮らないという話も聞いたことがあったような。フィルムの場合は、失敗した写真であってもネガには残っていますが、デジタルの場合は気に入らない写真は簡単に消すことができます。しかし、こういう先人の記録を見ると、いかに失敗したものでもそのまま保存しておいた方が後で見た時に楽しめるのではないかと思ったりもします。

 木村氏は、常に自分の撮ったものが50年後にどう見られているか意識していたといいます。日常の中では実に当り前の風景であっても、街の姿などは10年単位で変わっていってしまうものです。そうしたものの記録というのは、プロよりはむしろアマチュアの範疇でしょう。携帯電話のデジカメでも常にカメラを持ち歩き、気になった風景を気り取って保存するというのは、ブログの普及とともに、今の世の中を記録しておくという意味においても重要な事だと思います。ただ、私は毎日デジカメを持ち歩いていながら日々の生活についつい流されてしまっていたなあと感じています。素人は素人らしく、自分の目から見た風景を居合いぬきのように切り取ったような写真を撮ってみたいものですが。

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