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功名が辻 「種崎浜の悲劇」

 今回わざわざ大河ドラマの内容について触れようと思ったのは、実に今の世界情勢と合致するような事を本日扱っていたと思ったからです。今回の内容をご覧になっていない方のために簡単に説明すると、山内一豊が関が原の後、長曽我部氏の領地であった土佐を治めることになるのですが、山内家に従わない一領具足を一掃するため、はかりごとを用いてその勢力を一掃してしまうのですね。これは、徳川家からの圧力があり、いつ自分が改易になり、路頭に迷うことのないようにという考えあってのことですが、この時代には話し合いで平和的に交渉するというよりも、直接命のやり取りをしなければ事は収まらないという事情もありました。それが徳川の世が長く続く中、内乱が起こらない平和な世になったのですが、まさに今、世界の国々の中には今から400年前の日本のように直接命のやりとりをしなければ事を収められない国もあるのです。続き

 それが日本の隣国であるロシアだというのですから、まったくやりきれません。以前ここでも書きましたが、プーチン政権は国内におけるロシアからの独立勢力に対して毅然たる対決路線をとっています。テレビや新聞などで暗殺に関係があるのではないかという説を信じるとするならば、プーチン政権というのは、日本の歴史上の人物で言えば、下手をしたら自分に従わない集団を皆殺しにした織田信長のような事をやってしまうのではないかとすら思えるほどのかたくなさなのですが、今の日本は外交上、ロシアに対してどういう立場を取っていくのかというのが気になるところです。

 これからの大河ドラマでも当然明らかになってくるでしょうが、徳川政権が盤石の基盤を持つためには、今回の山内家の悲劇のような事が日本国中で繰り返され、多くの血が流されたことでしょう。平和な世を作るために血を流さなければならないというのは大いなる皮肉でありましたが、その当時には顧みる歴史というものがなかったということもあったのかも知れません。一つ言えることは、我慢に我慢を重ねて平和な世を維持するということは大変に難しく、武力を持って居丈高に語ることは実に簡単な事だということです。そのかわり、相手がそれに応じてしまったら元の平和な時代に戻すのには一世代では到底無理になることでしょう。

 今の日本のでは、かんたんに物事を処理しようと思うあまり、地道に説得や交渉に汗を流すことが軽んじられているのではないかとすら思うことがあります。しかし一旦暴力の連鎖の中にはまり込んでしまったら、今の日本の社会のあり方すら変わってしまいかねません。私にとって不思議なのは、今子供たちによる自殺はいけないと言っている人の中に、日本は武力をちらつかせながら外交をせよと、同じ命の事について矛盾する考えを持っている人がいることです。弱肉強食の世の中であるのなら、自殺するような輩は見捨てられても仕方ないという考えも当然あってしかるべきなのですが、そういった一貫性がなく、感情のみに流されている社会になってしまっている感じもあります。実際、そういうフラフラとした世論というものが一番恐ろしいのですけど。たとえドラマであっても、歴史を学ぶ中で、いかにして現代に生かしていくのか。そういう事を考えながらドラマを見ていくと、過去の話としてだけでなく現代の物語としてもドラマを楽しむことができるでしょう。

コメント一覧

耳成法市 2006年11月27日(月)22時14分 編集・削除

一昨日、カンヌで最高賞パルムドールを受賞した『麦の穂をゆらす風』を観て来ました。初日初回から満員でした。大英帝国による圧制の下の、アイルランドが舞台です。暴力は結局、悲しみの惨劇しかもたらさない。とは言え、絶望の余り、暴力に走らざるをえなかった人達を、非難するのも酷過ぎる。事の最初に、非人道的な残虐を繰り返し、立場の弱い側に、憎悪を植えつけてきた事が問題なのだと思う。
国策映画が続く日本映画界も、擦り寄り報道を繰り返す報道各マスコミも、だらしなさ過ぎるから、この悲劇が叉、繰り返されようとしている。

管理人 2006年11月29日(水)00時20分 編集・削除

コメント元発言で例に挙げさせていただきました山内一豊の件についても、多くはその場をまずしのぐために暴力に頼ってしまっています。民衆の憎悪が為政者に向かずに同列の人たちに向いてしまうのは、それだけ為政者の側が狡猾だからということもあるのかも知れません。

何にでも批判的な見方しかしないというような「批判」がこちらにもあるかも知れませんが、何もかも上から流れてくる情報のみを鵜呑みにするだけでは、いざという時に自分の判断自体ができないということにもなりかねません。このようなことを書き連ねているのには、人に読んでいただくということもありますが、文章を書きながら自分でも考えるという側面もあります。

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