日本のテレビの中でいわゆる「時代劇」の衰退というのが実に激しい今日この頃です。民放ではテレビ朝日の「暴れん坊将軍」のワクがついに消え、かろうじて月曜8時の「水戸黄門」のワクがシーズンごと交代という状態の中かろうじて生き残っているという状態になっています。ただ、視聴者は時代劇自体が嫌いなのかというと、そうでもないと言えるのがNHKの大河ドラマとこの木曜時代劇のワクがしっかりと続いているということです。今回の題目は何と「鞍馬天狗」ということで、コテコテの大活劇で、しかもアラカンという先達の印象が強い中どんな感じで仕上げてくるのかという興味で、しっかり見させていただきました。
はっきり言って野村萬斎の鞍馬天狗は、アラカンのそれとは全く違っていましたが、殺斬シーンの画像効果とあいまってそれなりにいい味は出していたように思います。それにしても、ドラマ全体の演出が西部劇みたいに盛り上げていて、鞍馬天狗初登場のシーンにおいては、まずは遠くから馬の蹄の音があり、じわじわと現れるというすごい登場でした。こうした大げさなやり方は、鞍馬天狗がはるか昔のヒーロー物だということを知らない人にも瞬時にわからせる効果があったのではないでしょうか。たまたま前の日に芥川賞・直木賞の発表があり、いわゆる新しい文学なるものに脚光があたった翌日にこうした古典に親しむというのも不思議な気がします。ただ、ワンパターンで古くさいシンプルな活劇であるからこそ、多くの人にこれまでも受け入れられてきたのでしょうし、恐らくこれからも新たなファンを獲得するはずです。
同じNHKでは、今週から土曜日にも興味深いドラマが始まります。プロ野球の南海ホークスからロッテ・ヤクルト・ダイエー・中日・オリックスなどさまざまな球団を渡り歩き、行く先々で選手を確変させるという異能を持った高畠コーチがプロ野球界から高校教諭という世界に飛び込んだノンフィクションを下敷きにしたドラマ、「フルスイング」です。高畠さんがすごい人だけに、こちらの方もドラマ自体の出来が気になるところですが、こちらも楽しみに待ちたいと思います。現在のドラマの多くは原作のコミックスに依存することが多く、ドラマのために書かれたじっくり見られるものが少ないように思います。個人的にはノンフィクションの圧倒的な迫力には勝てない部分がフィクションにはあるとは思いますが、物語の力を見ているこちらがわに感じさせるようなドラマを今年は多く見させてもらえればなと思います。ともあれ、この2つのドラマには今後とも注目しています。