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解体的交感 ニューディレクション(DIW 414)

解体的交感・ジャケット写真 ものすごい思い入れがあって買ったのではありませんでしたが、地元のCDショップの棚に淋しそうにおいてあったので、何かに誘われるように購入してしまいました。『幻の』という言葉はいろんなところで使い過ぎるぐらい言われていますが、1970年6月28日、東京新宿・厚生年金会館小ホールで繰り広げられたギターの高柳昌行とサックスの阿部薫によるフリー・インプロヴィゼイションを実況録音の形で記録したこのアルバムは、マニアにとっては垂涎の的だったでしょう。ほとんどノンストップで繰り広げられる二人の楽器を通じての会話。崩してしまいながらもいつの間にか向き合っている、アルバムのタイトルである『解体的交感』のイメージです。
 しかし、初回分だけ写真で紹介したように、当時のジャケットをそのまま縮小した凝りようで、またしてもマニア垂涎の的となるかという感じもします。あっ、決して私は今後の価値を見て購入したわけではありませんよ(^^;)。阿部薫といえば、同じディスクユニオンから10枚組というシリーズが過去に出ていました。更に、10枚集めたらおのおのに付いている応募券を送ると、非売品の未発表演奏を収めたCDがもらえたそうです。今の日本に熱狂的に阿部薫を追っかけている人がどれくらいいるか知りませんが、そういう人を巻き込んで商売にしようとして嫌らしいなあと思った記憶があります。たまたまその時期に阿部薫に出会えた人はいいですが、そうでなければ景品のCDはそれこそ幻です。いくら金を出しても手に入れたいということになってしまうでしょう。ただでさえ愛好者が少ないジャンルの音楽であるのに、入手しにくい、あったとしても価格が高いというのでは底辺が広がりません。生きていた時には様々な毀誉褒貶が聞かれた阿部薫ですが、純粋に音だけ聴いてファンになった人たち、これからファンになる人たちのために、もっと普通の形で出してもらいたかったなあと思います。(99.8.18)


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