99年のライブ

 

 Ned Rothenberg 佐藤允彦 Duo(1999.5.8 静岡・青嶋ホール)

ポスター 青嶋ホールというのは、全国でも珍しいかもしれない、個人所有のクラシック専用のホールです。と書くと、それじゃあジャズをやっているということになって、クラシック専用のホールじゃないでしょうとつっこみが入りそうですが、小さいホールですがそこら辺の格調がたっぷりのホールなのですよ。当然生音でも十分出来るような設計がなされていて、今回の佐藤允彦さんがピアノ、ネッド・ローゼンバーグさんがサックスとクラリネット、そしてなぜか尺八と(^^;)、機械を通さない生の音で楽しませてくれました。

 で、どんな演奏をしたかというとお互いに即興演奏をしたのですね。即興演奏というのは、今ではジャズの専売特許のように思われる方もいるかもしれませんが、モーツアルトやベートーベン、バッハなんかもやっていたそうですね。特にバッハは弟子をそばに侍らせて、即興で演奏した音を楽譜に起こさせたという話もあります。音楽には緻密に作るやり方と同時に、その場で即興的に演奏しながら作ってしまう形態もあるのです。でも、私がいつも聴いているジャズと違って、佐藤さんのピアノはとっても格調が高かった。ネッドさんがどんなフレーズを吹いてもそれなりに受けて投げ返すのはさすがです。しかしそうした演奏に耳が慣れていくと、逆に佐藤さんに主導権をとってやってもらいたいもの。最後の最後になって、佐藤さんがその場の演奏をリードし、曲というほどでもないのですがまとまった音の固まりをネッドさんに与え、それをまた返していく。まさに音のキャッチボールという言葉がぴったりと合った今回の演奏でした。

 なんでも、二人が最初に演奏をしたのは6年前でそれから毎年競演する機会を設けているとか。ジャズのようでもあり、現代音楽のようでもあり、このホールにぴったりの演奏でした。ただ私などは即興演奏というと、つい音のキャッチボールなどという生やさしいものではなく、ルール無用の殴り合いのような(つまり、相手を押しのけてでも自分の音を出そうとするとか、演奏そっちのけで笑いをとりに走るとか(^^;))パフォーマンス的要素が強いものも好きなので、物足りなさは残ったのですが。でも、久しぶりのライブで生の音を聴けて、とっても嬉しかった。特に、静岡市という音楽文化不毛の地で(^^;)、一流の音楽家を呼んでくれるプロモーターの方にはつくづく頭が下がります。

 

アケタ・オーケストラ(1998.12.30 東京西荻 アケタの店)

 あれ、考えてみたらこれは99年のライブではないわけですね(^^;)。まあいいか。アケタ・オーケストラとは、ジャズ・ピアニストの明田川荘之さんの主催するオーケストラのことです。詳しくは一度戻ってアケタの店関連のところをご覧になってください。メンバーは、写真の中に書いてある人たちの出演になります(露骨な手抜き(^^;))。
 知っている人が見るとそうそうたるメンバーなんでしょうが、さすがに知らない人が見ても何がなんだかわからないのでしょうね。「年金オーケストラ」と書いてあるとおり、皆さんお世辞にも若いとは言えません。しかし、若さだけではどうにもならないのがジャズの世界。いわゆる「中堅」と呼ばれる人たちがこれだけやっているんだぞという感じがしました。
 最初に演奏されたのは曲名は聞き逃したのですが、すごい曲でした。普通ジャズはテーマであるメロディを何回か繰り返した後、アドリブと呼ばれる即興演奏に入ります。演奏しながらどんどん新しい音を作っていくのですね。譜面通りに演奏するのも大変ですが、即興演奏の場合は、新しいアイデアがなくなったら即アウトです。ですから、延々と長いソロをとって即興演奏をするというのもかなり大変だとわかっていただけるでしょうか。彼らはそうした即興演奏に命を懸けているので、メロディラインのあるテーマの部分は、そんなに問題にしないのですね。しかし、一般の人は逆に訳の分からない即興演奏の部分より、わかりやすいメロディラインの方を好む傾向があります。ジャズのCDといっても、日本のポピュラーをピアノでジャズ風に演奏するものが売れていたりしますから、一層フラストレーションがたまるのかも知れません。
 さて、最初の曲の話に戻りますが、この曲のメロディは「ドレミファソラシドドシラソファミレド」の単なる繰り返しなのですよ。私は最初リハーサル不足で練習しているのかと思いました(^^)。しかし、よく考えてみるとこの曲はそうしたメロディライン中心の音楽に対する強烈な反発であるような気がしてきました。彼らジャズミュージシャンは曲名を決める際に一番悩むと何かの本で読んだことがあります。ポピュラーのように歌詞のある歌が付いているわけでもないし、名前がどうあろうと別に関係ないのですね。その他に、このオーケストラで特徴的なことは、前言と全く矛盾するようですが(^^;)、日本的なメロディへの帰結という奴です。
 皆さんは、日本的なメロディというと、どんなものを想像されるでしょうか。明田川さんは全国へのライブツアーが多く、そうした経験もあるのでしょう、非常に多くのオリジナルをものにされています。特に地元の民謡とジャズを融合させた一連の作品は、アメリカのモダンジャズのコピーとは一線を画しています。真に国際的なものというのは、土着の方向に向かうもので、明田川さんのジャズは海外で聴いてこそ真価を発揮するようにも思えます。そうした挑戦は、実は西洋から音楽が入ってきた時分から行われていたこと。この日は服部良一作曲の『湖畔の宿』を明田川さんの歌付きで演奏して大受けでしたが、服部良一さんはまさに日本のジャズにとっての先人で、日本人にとっての土着したジャズというものを実践している日本では希有のバンドと言えるでしょう。明田川さんは先年、政府の文化事業でアフリカに演奏旅行に行かれましたが、こうした演奏を十数人で聴くというのもなにか勿体ないですね。まあ、大体において単にはやっているから音楽を聴いている人が多いところにあるのでしょうが、もう少し注目してみてもいいと思うのですがね。ああ、何か最後はライブレポートらしくなくなってしまいました(^^)。


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