長者の山
明田川荘之 林栄一DUO(AD-55)

「長者の山」

 林栄一さんという人は、これは本人には失礼かもしれませんが、自分のバンドを主催して音楽活動をするよりも、他の方のバンドで思いっきり吹いた方が面白いという感じがします。ある意味、いろんな人の色に染まりつつも染まりきるようなことはなく、そのなかで強烈に自己主張するという感じでしょうか。周囲もそうしたいい意味での我が儘さを許してしまっている、それがまたいい味を出しているという感じですね。渋谷(毅)さんや明田川さんのオーケストラでもそうですし、こうした二人での演奏でも、絶妙という関係が聴いていて伝わってきます。
 しかし、この作品が画期的だと思ったのが三曲目というか二曲目の後半というか、明田川さんが崩しまくった曲がようやく終わりかけたところです。明田川さんは演奏を終わらせそうでなかなか終わらせない王者だと思っているのですが(^^;)、ここでもなかなか演奏が終わらずに3分以上が経過してしまいます。こうしたことは実際にアケタの店にライブを聴きに行っている方なら誰でも経験があるはずで、かくいう私もこれで痛い目に遭っています。終電ぎりぎりまでライブを楽しみ、終電に乗る寸前で無情にもドアが閉まり、翌日仕事があったのに現地宿泊を余儀なくされました(^^;)。でも、面白くなかったらそのまま帰ってしまうだけなのですが、やっぱりあの『若さゆえー』と歌いださないと帰れない私も私なのですが(^^;)。
 というわけで、そんなライブを実際に聴きに行かなければわからないようなところまで忠実に記録したということで、この作品は異彩を放っています。おそらく同じネタでやることはないと思いますし(^^;)、明田川さんのファンにとっては手に入れて聴きながら、また同じことをやっているんだろうなと思いつつ楽しむという、ちょっとジャズの話ではなくなってしまいつつもありますが、違った楽しみ方もできます。
 後半の二曲はボーナスとラックということですが、最後の父である明田川孝氏に捧げた曲はオカリナの独奏です。アルバムとしてのまとまりにかけるような気もするのですが、それもご愛嬌でしょう。(2000.10.13)

曲目

1.長者の山(秋田民謡)
2.アイル・クローズ・マイ・アイズ(B.ケイ&B.リード)
3.アイル・オープン・マイ・アイズ(明田川荘之)
4.アイ・フォール・イン・ラブ・テゥ・イージリー(J.スタイン)
5.アイ・リメンバー・タカシ(明田川荘之)

参加メンバー

明田川荘之(ピアノ、オカリナ)
林栄一(アルト・サックス)

録音日時・場所

1〜3.明田川、林デュオ
1996年11月19日アケタの店ライヴ
4〜5.明田川ソロ
1997年11月1日アケタの店深夜ライヴ


アケタズディスク全リストへ

『アケタの店』の世界へ

日本ジャズを聴こう(^^)へ

文章の奏でる音楽へ

ホームへ

ご意見、ご感想をお寄せください

mail@y-terada.com