「象(きさ)の小川」
今泉裕4フューチュアリング小林英一(AD-29)

「象(きさ)の小川」

 ちょっと見にくいですが、このジャケットは流れる小川に咲きほこる満開の桜。ちょっとジャズのアルバムに不釣り合いな題名ですが、表題曲のタイトルからとっているとのこと。今泉さんのオリジナルである作品の題名を決める際に、この水墨画を描いたオカリナ制作者・高橋道則さんが題材にした大友旅人の万葉集の歌をそのまま題名にしたとのこと。その歌は

『昔見し象の小河を今見ればいよよ清けくなりにけるかも』(巻三 316)

 で、吉野の離宮のことを歌った本歌に対する反歌となっています。つまりこの歌は吉野の事を歌ったものであり、イメージ的にこのような桜の咲きほこる小川の情景を思い浮かべたわけですね。吉野川を「象の小河」と表現する旅人も大げさですが、曲の題名にしてしまう今泉さんもなかなかではないかと表題曲を聴きながら思った次第です。
 さて、このアルバムは今泉さんのグループでギタリストとして活躍した小林英一さんの追悼アルバムということになってます。1990年3月30日に何と26才で亡くなったということで、急遽過去の録音をCDに起こすことが決まったそうです。若い才能が夭折してしまうことは悲しいことです。でも、私など一般人は墓碑銘に刻まれたとしても数代続くうちに忘れ去られてしまうことでしょう。その点作家や音楽家は本やCDという形で足跡を残せるというのは羨ましくもあります。この中でもWARのナンバー、「ワールド・イズ・ゲットー」で繰り広げられる小林氏のソロは聴き応え十分。小林氏自体がロック系のギタリストということもあり、音的には一般的なジャズとは違いますが、そんなことはあまり聴く方にとっては関係ないと思うのですが。

曲目

1.象(きさ)の小川(今泉)
2.トラブル・イン・マインド(R.M.ジョーダン)
3.ボーイ(今泉)
4.君に捧げるサンバ(C.サンタナ)
5.ワールド・イズ・ゲットー(WAR)

参加メンバー

今泉 裕(ss)
小林英一(g)
山元恭介(b)
佐野康夫(ds)

録音日時・場所

1989年5月3日、4日
東京新宿・ピットインでのライブ


 

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