子供の歌はどこへ(2002.11.1)
まさに1年遅れの新譜を聴くことになりました。ただ、このCDについてはちょっと前にラジオで告知をしていた記憶がありそんなに前のことだとは思わないんですが、とりあえずその新譜を紹介します。
です(^^;)。アニメソングと言うことで引く方もいるかもしれませんが、水木さんの30周年記念版と言うことで私の世代にとっては良くも悪くも染みついてしまっている音なんですね。この内容については後で触れるとして、まず最初に書いておきたいことがあります。それは、子供の聴く音楽についてです。
たまに深夜まで起きていると、童謡の特集があったりします。由岐さおり・安田祥子姉妹とか、小鳩くるみとか童謡歌手上がりの人たちが今でもコンサートで地方を回っていますが、今の子供対象と言うよりも、リアルタイムで童謡を歌った壮年の人たちのためという気がします。少なくとも私たちテレビが家庭の中心に居座った時代に子供時代を過ごした世代にはテレビアニメの主題歌が子守唄代わりだったのですね。
それについて、もう少し個人的体験を少し書いておくことにします。高校生ぐらいまでは地元から動かない場合がほとんどで、私にとってもそんな感じでした。大学で地元を離れて、特に北海道から沖縄まで全国各地から人が集まるところに迷い込んだのですが、まだカラオケなど一曲100円払って8トラックテープのカラオケを歌詞本を見ながらうたっていた当時ですからできるならみんなの共通認識がある歌を歌いまくることになります。昔の大学生には寮歌なるものがありますが、歌謡曲を全員が知っているとは限らないんですね。で、どうなるかというとアニメやドラマソングの大合唱になるという(^^;)。実に寂しい事ではありますけど、それでもアニメソングだけは大人とは隔絶された世界にあった事は確かです。ただ、そうした傾向もドラゴンボールくらいで終わってしまったような気がします(実写版のウルトラマン・仮面ライダー・特撮戦隊ものは残っているようですけど)。唯一の例外はサザエさんでなくちびまる子ちゃんでしょう。今はアニメの作者や東京ムービー企画部、竜の子プロ文芸部作詞なんて歌はないですし(^^;)。原因はなんでもタイアップさせ、CDの売り上げをまず狙うという制作現場の意識変化にあると思います。結果、アニメを見る対象の子供が聴いても何だか意味がわからない歌が番組のテーマソングとして乱立する結果となってしまっています。今は逆にJポップ自体が単純化し、小学生とかでも楽しめるものが増えてきていたり、童謡のカバーがヒットしたりしていますが、それはとりもなおさず子供対象番組の作り手の怠慢の結果もあると指摘しておきましょう。では、内容についてみていくことにしましょう。
水木一郎さんと言えば「マジンガーZ」ということで、2枚組のCDのうち、1枚が全てマジンガーZのはじめのテーマで占められています。なんというか、実にマニアックですね(^^;)。個人的にはもう一枚の方の、水木さん自身が選んだという怒濤の21曲が圧倒的な迫力で私に襲いかかってきたのですが。演奏は当時のものそのままを使い(コーラスのコロンビアゆりかご会の声も当時のまま(^^;))、水木さんのボーカル部分だけ入れ直したという凝りようは、オリジナルに忠実に聴きたいという欲求を着実に満たしてくれます。それにしても、まだまだ聴き足りないと思うほど当時の水木さんはいろんな歌を歌っていたのですね。アニメソングの中に実は一曲だけ毛色の変わった曲が収録されています。それが、実は私のジャズのページでも紹介している渋谷毅さん作曲の『ちょんまげマーチ』です。
そういえば水木さんは一時期、NHKおかあさんといっしょで歌のお兄さんをやっていた時期があったのでした。子供の歌と言うことで言えば現状ではこの番組発の歌が王道と行ってもいいくらいなのですが、そう考えると実に幅広く子供のための歌を歌い続けてきたんだなあと感慨深くなります。日本のアニメは積極的に海外に販売されているそうですが、主題歌をその国の言葉で吹き替える場合もあれば、そのまま流すことも割とあるそうです。大人たちは子供が暴力的な思想を持つと日本製アニメの席巻を快く思わない向きもあるようですが、私はこのことについては疑問に思います。その考えで行くと30年間そういったアニメを見続け来た日本人は、社会を動かす地位についた人たちが暴力的言動で問題を起こしても不思議ではありません。しかし一部の人は凶暴になったとしてもそれはアニメのせいでなく個人の問題でしょう。同じような人はアニメがなくてもそうした気質を持つものです。むしろ、気合いの入った主題歌を歌い上げる人たちは日本だけでなく海外の思わぬところにさらに生まれそうですね。日本語はできないのに歌だけはちゃんと歌える海外の人と知り合いになったら、ぜひこの歌声を聴かせてあげたいなと思わせる佳作です。
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