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「旅報告」と「旅行記」

 昨日、少し気合いを入れて日帰りの旅をしてきました。正確に言いますと、金曜の夜に出発し、中央道を下り駒ヶ根インターを目指しました。北海道をのぞけばかなり早い時期から紅葉が始まる中央アルプス宝剣岳直下の通称「千畳敷カール」が目的地です。ここの標高は2,611.5mあるのですが、極端な話、サンダル履きでも上れてしまいます。もっとも、そんな無謀な格好で来ている人たちはいませんでしたが。

 このルートについては、JR駒ヶ根駅から路線バス~ロープウェイの乗り継ぎで上れます。今回は車で出掛けたので、途中にある菅の台バスセンターの駐車場に止め、路線バスに乗り換えます。ロープウェイの始発となるしらび平駅までの区間は一般車は通行禁止になっているので、ロープウェイ駅に行くためには路線バスかタクシーを使う必要があります(ちなみに、バス料金は大人片道800円)。バスセンターに着いたのは午前五時ごろで、バスの始発は紅葉や登山シーズンということもあり臨時のバスが6時発ということだったのですが、到着した時にはバス停に長い行列ができていました(^^;)。そのほとんどが山登りを目的とした人たちで、私のように紅葉を求めて山登りはせず、付近を散策だけという人はそんなに気合いを入れて来ていなかったようです。

 それでも、行列の最後尾に並びバスを待っていたのですが、やはりというか一番のバスには乗れず、次の便を待つことに。ただ、これだけの混雑ぶりから、バスもロープウェイも臨時便が結構有り、2番目のバスとロープウェイに乗ることができました。丁度7時くらいのロープウェイに揺られて7分あまり、何の苦労もしないで登りつめた千畳敷カールの風景がこちらです。続き

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 前日は大雨だったということで、すっきり晴れ渡った空は実にすがすがしく、遊歩道をうろつきながら写真を撮りまくりました。澄んだ空気のせいか、何と富士山の先っぽまで見渡すことができたのは感激しました。できればもう少し紅葉していれば完璧だったのですが、これだけの天候に恵まれ、雄大な景色を楽しめたのですからそれはそれで十分かなという感じはします。来週・再来週あたりは紅葉も進み、もっと多くの人が訪れると思いますが、天候の急変により山の環境は一変しますので、これから行こうと思われる方は足元や防寒具・雨具の用意などしっかりされることをおすすめします。今回、遊歩道を一回りして現地にいたのは1時間ちょっとぐらいだったのですが、あまりに多くの人が訪れるのに比べ、ロープウェイで輸送できる人数は限られているため、ひどい時にはロープウェイに乗るために数時間待たなければならないような事もあるための行動でした。

 今回の行程を決めるにあたって、ガイドブックではなくインターネットからの情報を利用させていただきました。旅日記風に書かれたようなブログの中にも必要な情報がある場合もあり、あくまで備忘録的に書かれたものであるとしても、それなりに多くの人が見て有益なものがあるわけで、一大旅行記のような大それた志などなくても、それなりに出す意味もあるのかなと思います。ただそれが読んでいて面白いかというとそれはまた別の話ですね。

 旅行記といえば、たまたま先週の祝日に車に乗っていた時、他に聞くものがなかったということでラジオをNHK第2放送に合わせて聞こえてきたのが「“藪野椋十”世界見物」の朗読でした。この大正4年に出版された旅行記が実に面白かったのでついでに報告しておきます(^^)。この「藪野椋十」とは「渋川玄耳」のことで、東京朝日新聞へ入社し辣腕社会部長として名をはせた人物です。校正係として朝日新聞に入社した石川啄木の才能をいち早く認め、『朝日歌壇』を担当させた人物ということでも(むしろこちらの方が)有名です。実際に彼の筆になるものに触れてみて、改めて大いに感銘した次第です。

 一般的に私たちが人や物を評価する際、自分の思ったままを率直に出せるかというとなかなかそんな風にはいきません。ついつい他人の目を気にして、人物の言葉ではないどこかからの受け売りのような無難な言動に終始してしまうというのがよくある場合ではあります。ところが、藪野椋十なる人物は少々脚色しすぎということはあるものの、実によく驚き、感心し、その様子を素直に記録しています。同行者から洋行当初からリアクションが大きすぎだといさめられても、そんな事は全く意に介さず、現代の私たちからみても面白いさまざまなエピソードを書き連ねています。そんな人物だからこそ、啄木の作品からその素晴らしさを認め、啄木が世に出るきっかけを作ることができたのでしょう(「一握の砂」の序文まで書かれていますが、そちらの方は青空文庫で読むことができます)。それは、今の私にとっても実に参考になり、誤った偏見で物事を見誤る事のないよう再認識させていただきました。

 残念ながらこの旅行記は復刻もされておらず、さりとて青空文庫でも読めませんが、近石真介さんの朗読で楽しむのもおつなものです。このシリーズは先週始まったばかりのようですので、これから聞き始めても十分楽しめると思います。月曜~金曜の午前10時45分からの15分です(全10回なので、今週末いっぱいまで放送あり)。時代の違いということはあるにしても、これだけ面白くてワクワクする旅行記はそうざらにあるものではありません。お時間のある方はぜひぜひ御拝聴のほどを。

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