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地元と利用者との温度差

 今、何かと話題なのが滋賀県栗東に新幹線の新駅を作るか否かということでしょう。地元が新駅誘致による経済効果を求めて作りたいという気はわかりますが、新幹線利用者としてはあくまで通過駅であり、あってもなくても大した影響はないというのが正直なところでしょう。続き
 
 それは、私の住んでいる静岡市にある静岡駅にもあてはまります。住んでいる側としては、今よりも「ひかり」を多く停めて欲しいですし、「のぞみ」を静岡駅に停めて欲しいと県知事が懇願したりしています。しかし、仕事などで早く大阪や福岡に行きたい人にとっては、静岡にわざわざ停められたら、新幹線の利用すら改めて検討されてしまうかも知れません。個人的にはJR東海に懇願することで設備負担を自治体に押しつけられることにより税金が増えるぐらいなら、現状でも全く問題ないと思っています。こちら静岡は早くから東海道新幹線が通ってしまったために、在来線のサービスは最悪で、車両にトイレが付いていないとか、ほとんどがクロスシートで乗り心地も悪いという感じになっていて、特に沼津~浜松間は18きっぷなどで普通列車を使って移動しようとする人たちにとっては鬼門となっています。むしろこちらの方を改善して欲しいと思っているのですが。
 
 今後新幹線を誘致する自治体は、建設費用を負担させられるばかりか、在来線自体がなくなってしまう危機をかかえています。先日のニュースで、長野新幹線開通によって廃止された在来線の横川~軽井沢間を復活する話があるそうですが、さまざまな問題もあるでしょうからすんなりと再開するとは思えません。いったん廃止してしまった後嘆いたとしても、取り返しが付かない事になる可能性があります。個人的には、東北新幹線の盛岡~青森間でも、その間の都市の空洞化は将来的には確実に起こってくるだろうと思っています。特に東北地方への交通については新幹線に乗らないのなら、東京方面からなら高速バスが安くて便利になっていて、バス会社もこうした流れを追い風ととらえたのか、さまざまな戦略的なバスやプランを登場させています。4列シートの観光バスタイプなら東京~青森が5000円などという値段を出してくるところもあり、フェリーを利用して東京~函館までというバスが1万円前後で走っているということになると、通勤で乗る近郊の人たちか、列車に乗るのが目的という人を除けば、安く行き来したいと考える人たちは鉄道よりもバスを選ぶようになるでしょう。したがって、鉄道会社は多くの乗客を逃がすということにもなりかねません。特に第3セクターの会社の経営は大丈夫なのでしょうか。
 
 これは、地方空港についても同じだと思いますが、地元の立場と利用者の立場は相当違うものであり、利用者というのは実に移り気で、一時集まっても次に新しく面白いものができればすぐに移ってしまいます。そんな中、熱狂が冷めても地道にコツコツと稼いでいけるものなのか、これからの地域を考える場合は新幹線駅や空港に関しては慎重であってほしいと思います。なぜなら、慢性的に赤字ということになれば、その負担を被るのは利用者ではなく沿線住民の方だからです。

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