100才以上の高齢者が所在不明になり、育児放棄された子供が無残な姿で発見されるという、まさにこの世の末だと思えるようなニュースが何度も繰り返される割には、その原因はどこにあるかといった点にはあまり突っ込まれていないような感じがあります。隣近所の付き合いが薄れたのが原因だという話もありますが、それ以上にお互いのプライバシーに関わりたくとも深く関われないような空気を作り出したある法律の存在があります。それが、「個人情報保護法」なのですね。
個人情報保護法が施行されてからというもの、本人に了承を得ないでいわゆる「個人情報」といわれるものを知ることが非常に難しくなっています。例えば、子どもの連絡網でクラス単位になったものは現在ほとんどの学校で作れずにいます。それは、クラスの中で一人の親からでもうちの連絡先を公開するなと抗議されるのを(実際に抗議されたということではないことに注意)恐れての事なのです。今回の事件がらみで言うと、例えば子供が上の学校に上がる際、児童虐待があるなど新しい学校へも知らせておいた方がいいような情報であっても、それ自体が個人情報であるという認識から、全く知らせることができないというのが現状なのです。つまり、新しく学校へ行ってすぐに子供に関する問題が明らかになればいいですが、そうではない場合、深刻な状況が出現するまで子供だけが我慢しなければならない状況ができてしまっています。
お年寄りについても、面倒をそのお子さんが見ているような場合、お子さんの了承を得なければ行政でさえも何もすることはできません。できるとしたら、法律を無視して当事者から訴訟を起こされることを覚悟した上でやるしかありません。そうした社会が理想の社会だとし、法律を作った人がいるのですから、マスコミはその人物に取材し、法律を作った時にさまざまな問題が起こるとわからなかったのか徹底的に究明すべきでしょう。必要とあれば、法律を修正するなり改正するなどし、命を繋ぐ連絡網を確保できるようにすべきなのです。
最近は企業のインターネットサイトからクレジットカードを使った人たちの情報が漏洩したということが時々話題になります。法律を作れば情報漏えいがなくなるということは決してありませんし、その法律のおかげで苦労している人が多くいるという事を軽んじている現代の社会こそが末期的様相を呈していると言えるかも知れません。それにしても、なぜ政治家やマスコミはこの問題について何も語らないのでしょうか。