川内康範氏の訃報にはちょっとびっくりました。昨年からワイドショーを賑わせていた森進一氏との確執報道では実にお元気そうで、まだまだたくさんのお仕事をされるのではと思っていただけに大変残念としか言いようがありません。ただ、川内氏についての報道では、そのほとんどが森進一氏との事を中心に進めているのはやめてほしいと思いました。
川内氏は月光仮面などのテレビドラマ・映画などの脚本や、歌謡曲の作詞をされるということで、どうしても氏の人生を振り返る時に、わかりやすさからか代表曲・代表作品の羅列に落ち着きがちです。ただ、氏にとってはそうした仕事は、ご自身の活動の中の一つであったに過ぎなかったのではないでしょうか。自民党政権のブレーンとしての顔を持っていながら、あからさまに左翼だということで差別をせず、戦没者の遺骨引き上げ運動を行なっていた竹中労さんに援助をしています。思想がどうのではなく、信頼に足る人物かといった判断で人と付き合うという、言葉で書くのは簡単ですが、あれだけの有名人になった川内氏がそうした付き合いを貫き通すというのは、よほどの信念をお持ちだったのではないかと思います。
今回の訃報によって、これから森進一氏はどうなってしまうのかという切り口の報道には本当に辟易しています。これだけの破天荒なる人物は、今の時代ではその意地を貫き通すことはできなったかも知れませんが、テレビの画面を通じてその頑固な人柄に接するにつけ、何かしら懐かしい感じに襲われました。損得勘定だけで動くのではなく、意気に感じて動くことの大切さをしみじみとかみしめつつ、故人を偲びたいと思います。