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ドキュメント・スポーツ大陸 「ありがとうボクシング・内藤大助」

 ボクシングというスポーツは、特にプロでの戦いということについてみると、単純に強い者が勝つとは言い切れない微妙なニュアンスを持つスポーツなのかも知れないと思います。今回の主役・内藤大助さんも、実力はありつつも、もし資金を集められなかったら、あの世界タイトルを奪取した日本でのポンサクレック選手との試合もできないまま引退に追い込まれてしまう瀬戸際まで追い詰められていたのでしたから。その事はインターネットのニュースヘッドラインでもトップニュースとして報じられていましたが、多くの人の目には、内藤さんの王座奪取はまず難しいだろうという向きがあったように記憶しています。ある意味、なりふり構わず試合興業を行なった宮田ジムは、いちかばちかの夢を乗せた賭け(といっても、激しい練習の裏打ちがあったからこその自信はあったことでしょうが)に勝ち、念願の世界タイトルを手に入れたわけですが、その栄光にちゃっかり便乗し、その血のにじむような努力の跡を全く見ずに世界挑戦のアドバルーンを挙げたのが例の亀田親子だったわけで(^^)。続き

 この番組ではその亀田戦は全くスルーして、先日行なわれたポンサクレックとの再戦を軸に内藤大助さんの日常に密着していました。急勾配の階段ダッシュを20セット行なう地獄のようなメニューは、となりで同じ練習を行なう20代の選手でさえ満足にこなせないのに、最終ラップが最高タイムという驚異のスタミナを画面を通してでも強烈に印象付けました。日本一練習をしているというトレーナーの言葉に嘘はないからこそ、3月8日の試合ではあれだけの大接戦をスタミナ切れを起こすことなく防衛できたのだと言えると思います。

 しかし、そんな強いチャンピオンでもちょっとした気の緩みからほころびが生じることがあります。番組内で大橋ジムにスパーリングへ行き、17才の練習生ボクサーにパンチを当てられるシーンが出てきます。その時は疲れがたまっていたということの他に、減量の苦しさがあり、体が動かなかったとのこと。どんなにきついトレーニングをクリアしたとしても、体重別で行なっているボクシングです。リミットの体重にベストの状態で仕上がらなくては、それまで作り上げてきたものがあっという間に崩れ去ってしまうというのもボクシングなのです。決められた練習メニューをたんたんとこなすということも、期日までに設定した体重まできっちり落とすということも、自分に負けない心の強さがなければとうてい達成できないものです。ボクサーになるためには、何よりも「真面目である」ことが重要だという話があります。たまたま今日の夕方、例の亀田一家の長兄が復帰戦ということでテレビ中継がありましたが、あの試合は試合勘を取り戻すには良かったとしても、画面からは内藤大助さんのように極限状況まで体を作って試合に臨んでいるのかと、そんな疑問を感じながら試合を見ていました。

 とまあ、こんな事を書いていても、もし将来内藤VS亀田長兄戦が実現したとして、亀田長兄が勝ってしまえばそれまで持ち上げていたマスコミはさっさと亀田一家に鞍替えし、内藤神話も崩壊の危機に瀕してしまうでしょう。しかし、それも勝ったものだけが栄光を独占するボクシングらしいと言えなくもありません。そもそも、今回の企画も、もしポンサクレックが1ポイントでも判定で勝っていたら、恐らく放送すらされなかったでしょうし。そうした危うい栄光の道を綱渡りのように渡っているのが現在の世界チャンピオンであり、だからこそ、私たちはその試合に熱狂するのです。そう考えると何度負けても次がある他の格闘技・スポーツと比べて、もっと評価を受けてもいいはずだという気がします。日本のボクシング界は、過去にチャンピオンを取った選手の待遇や引退後の事など、もっと考えてあげてほしいものですが。

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2015年08月28日(金)00時06分 受信