土着というのは案外莫迦にできないもので、今の時代、テレビなどによってこれだけ日本国内の差がなくなってしまうと、しっかりした心の拠り所のあるなしというのは、そこで生きている人たちについても差がついてしまうのではないかと思うことがあります。例えば、以前青森で半ば強引にねぶた祭りに参加したことがあったのですが、こういう祭りによって毎年エネルギーを爆発させることができる人たちは幸せだなあとしみじみ思ったり。
NHKの中で、ドラマというと朝ドラの東京・大阪に加えて、「中学生日記」の名古屋がありますが、これらの地域というのはあまり地域色を出したものではなく、ごく普通にドラマ作りをやっている印象があります。民放では、今「水曜どうでしょう」という深夜バラエティがブレイクしているHTB(テレビ朝日系)が毎年一回北海道発のドラマにこだわり、それなりに力の入ったものを全国放送しています。
今回とりあげる福岡放送局のドラマも、かなり力を入れて筑豊という場所にこだわったテーマでドラマを作ってきました。さまざまなレジャーの出現により、芝居小屋で芝居を見て楽しむということ自体がほとんどなくなった中、今も存続している嘉穂劇場を物語の中心に据えているのですが、この劇場の歴史というのは、炭鉱の歴史とシンクロしているんですね。そういう事が、全く現地に行ったことのない私にも強烈な印象を残すのですから土着の重みというのはすごいものです。
といっても、炭坑の悲しい話を中心に据えているのではありませんでした。過酷な労働条件の中、もう思い出したくないような事も多くあったであろう土地にカメラを向けながら、暗く沈んだ情景は表面的には出てきません。それは、人が入れ替わり、過去にどんな歴史があっても将来への希望を抱きながら地域自体が動いているからで、これは今回舞台になった飯塚市周辺だけの話ではないのですね。
私は毎週のドラマ枠というのはほとんど見ないのですが、こういう地方発のドラマというのは好きです。現地に旅をして、そこの人と触れ合うような感じもありますし、東京発ドラマのようなにわかには信じられないような設定もそうそうないですし(^^;)。今回はNHKのドラマということでしたが、もっと他の地方発ドラマを見てみたいですね。