今さらここで書くことでもないかと思いますが、インターネットがいくら大きなメディアに育ってきたといっても、テレビの影響の大きさというのは今なお桁違いなのです。ちょっとテレビが紹介しただけで、その番組を見ていない人をも巻き込んで騒ぎが起きることもよくあります。先日の納豆におけるダイエット効果を報道した『発掘！あるある大辞典II』は、昔からあったテレビの不祥事の中でもかなり悪質なものだと私には思えます。
以前にもいろいろテレビの不祥事なるものはありました。新しいものではあの紅白歌合戦の半裸と見間違うほどのコスチュームで踊っていた事とか。これについてはどうやら現場のディレクターは半裸の演出を知っていたようで、それが火に油を注ぐ結果になってしまっていますが、その一瞬の気分を害した人々はいたとしても、あくまでそれを見ていた人だけの問題です。しかし、今回の場合は普通に納豆を食べたい人たちの中断を余儀なくし、放送内容を信じて買い込んだ人たちについては、過剰摂取により納豆だけでなく、タレに含まれる塩分を取りすぎてしまう可能性もあり、健康を害する恐れさえ生じさせてしまったのです。「健康」というのは多くの人の関心を呼ぶテーマで、本当に効果がある内容ならテレビ局・企業・視聴者の全部が喜ぶわけですが、番組制作に追い込まれたてレビスタッフの捏造のおかげで、テレビの力というものを負の方向に進めてしまった事実は消えることはありません。
こうした事をふまえて、私たちはテレビで放送されていることは何なのかということをもう一度問い直してみる必要があります。冷静に考えてみて、どんな食生活を送っている人でも納豆を継続して食べているならダイエットできるのか。専門家でなくても、摂取カロリーと消費カロリーには相関関係があるわけですから、テレビで劇的な効果が出ているということがあっても疑ってかかるべきでしょう。道理で振り込め詐欺の被害がなくならないわけです。これからはもしかしたら、テレビ番組の中で、出鱈目なテレビ番組に騙されないようにするためにはどうすればいいかなんてものが出てくるかも知れません。
テレビの恐ろしさというのは、最初は小さな波であっても、それを繰り返し流すことによって増幅し、社会生活を巻き込んでいってしまうということです。この繰り返しというのは、長い期間続けられるものもあり、集中的に流されるいわゆる「２４時間テレビ」のようなものも含んでいます。
テレビを見ているとどうしても受身になりがちです。改めて、テレビを見ていない時間を大切にするということが、私たちが上手くテレビと付き合っていくための鍵ともなるのです。単に芸人同士のいじめとしか思われない番組にも、実はいじめられる方が「いじめ行為」そのものを積極的に受けようと努力しているような裏もあります。彼らにとっては何もせずに傍観している事こそ、テレビで生き残るためにはしてはいけないことで、いじめられて可哀想だと思われ、自分の名前を覚えてくれればしめたものだと思っています。そうした現実は、テレビから離れたところでしか説明できないものであり、そうした話し合いをすることでテレビのからくりというものもわかってくるのだと思います。今回の不祥事は大いに責められることすが、私たち視聴者は安易に煽られず、どのように行動するかということを改めて考えさせてくれた事件として、心に留めておくべきではないでしょうか。