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歌い手の「プロ意識」とは

 ここを読んでいる方にはほとんど縁がないかも知れませんが、昨日と一昨日、NHKラジオ第一放送の深夜4時からのプログラム「心の時代」に奈良県の社会福祉法人「たんぽぽの家」の事務局をされている酒井靖さんのインタビューが全国放送されました。元々は障害児を持つ親が集まって、学校を卒業した後、社会の中に入って暮らせるようにと始めた集まりだったそうですが、多くの人になかなか届くことのない、体に障害を持った人たちのメッセージを歌にのせて発表するコンサートを全国規模で開くなど、その活動は全国的に支持されています。今回出演なさった酒井氏は、もともとそうしたメッセージに曲を付けて歌っていた、当時プロを目指していた歌い手さんだったということで、放送の中でもギターを持って多くの曲を歌っていました。続き

 酒井氏はインタビューの最後に、今の自分の立場について、自分が好きな歌という手段で社会参加ができるこの仕事を天職と考えていると語っていました。彼の立場はあえて言うならば団体職員に過ぎないかも知れませんが、まっ正直に書かれた嘘偽りの感じられない直球のメッセージを発信していく場が保証されているということは、ある意味プロのミュージシャンでもできないような事をやっているとも言えます。歌うことでお金を稼ぐのがプロだとしても、酒井氏の歌に賭ける姿勢というのは有名なプロの歌い手さん以上のものがあるのではないかと私には思えます。

 今日のワイドショーでは漫画家の松本零士氏と、歌手の槇原敬之氏の泥仕合のような盗作騒動を扱っていましたが、少なくとも槇原氏側の事務所の態度というのは、人気歌手という土壌の上にあぐらをかいたような態度であるのではないかと思ってしまいます。もちろん、歌手としての槇原氏と、槇原氏の音楽を売り出して儲けようとする事務所としての立場にはズレがあり、決まったサイクルの中でヒット曲を量産しなければならない重圧というのはプロ独特のものがあるのでしょう。有名になればさまざまなクレームが入るのは仕方がない事です。たまたま今回は相手も有名人だったということでネット上ではどっちもどっちではないかという意見も多いですが、プロならばそうしたトラブルを未然に防ぐようにきっちりと交渉することも必要でしょう。ところが今回は事務所の対応のまずさからあまり日本のミュージックシーンに関心のない私のようなものまでこの騒動を知るところになってしまいました。

 最近ではCDも売れなくなり、プロのミュージシャンといっても以前ほど大儲けというのはできなくなってきています。ただお金を稼ぐために歌を作ってツアーに出るというサイクルを淡々と繰り返すというのがプロならば、私はそうした人の歌など聴きたくありません。お隣の中国では、ネットのみで楽曲を発表したものが全国的に流行しているような事も起こっているようですが、これからはむしろ、ネットでの口コミで多くの曲が紹介され、今はまだ埋もれている多くの才能が、人気にあぐらをかいた従来のミュージシャンを駆逐するようになれば面白いと思いますね。

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