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NHKスペシャル 「急増 働く貧困層」

 日々バラエティ番組ばかりを見ていると、どうしても今この国で何が起いているのかという感覚がマヒしてしまいます。今回の番組はまだまだ悲惨な生活をしている人はいるのかも知れませんが、今の日本で起きていることを伝えてくれていました。続き

 地方の商店街や農家で生活が立ち行かなくなってしまった人をみると、ずっと働きずめでも報われない社会に生きていることに暗澹たる思いがよぎります。子供を2人抱え、アルバイトを3つ掛け持ちしている50代の男性にはまだ、自分の子供に大学に行ってもらいたいという夢があるからまだ救いがある気がします。私が番組を見ていて一番心配になるのは、都会でホームレスとして暮らす30代の独身男性2人のことです。

 恐らく東京や大阪など大都市には、それこそ数え切れない路上生活を送る若年ホームレスがいるのだろうと思います。35才の男性は働き口がないため、ゴミ箱から発売後すぐの雑誌を拾い、それを1冊50円で買ってもらい食べ物を得ているとのこと。取材の日は8冊集めたので何とかご飯が食べられると喜んでいたのですが、一日の稼ぎはたった400円です。それでも生きるためには続けなければならず、社会はそうした若者たちを助けないのです。

 こうしたVTRを見た学者の中には、若者にトライすることのできる環境を与えることは大事だが、競争に敗れた者を救済することはないという意味の事をカメラに向かって喋っていました。こういう考えを持つ方というのは少なくないと思いますが、それも割と治安が安定している現状だから発言できることでしょう。先日フランスで起こったような移民や貧困層による暴動が日本で将来にわたって起こらない保証はどこにもないと思うのですが。

 ここでもう一度、全く収入がなく家もないまま生きている人たちの事を考えてみましょう。彼らは日々の食事やゆっくり眠ることのできるベッドを求めています。もしそんなところに寝る場所と三度の食事を用意してくれる団体があったとしたら、たとえそれがカルト宗教の団体でも、イスラム原理主義の団体でも、多くの人はついていくでしょう。もっとも、イスラム原理主義の活動をしている人たちはそういった貧困層の救済から人の心をつかみ、何もしてくれない政府との対比からテロリストを育成するという形で勢力を拡大しているという話もあります。今の日本では革命やテロというのはまだ現実的ではないかも知れませんが、今後こうした貧困層が都市部を中心にして広がっていく中で、ちょっとした扇動によって大きな暴動が起こったり、治安の著しい悪化が起こらないとも限りません。はっきり言って、財政が足りないからといって彼らの救済を躊躇している間に、これからの日本の社会は劇的に変わっていってしまうのではと心配しながら番組を見ていました。今までは全中流化と言われた日本社会の中で、現状をひっくり返すということは考えられないことでした。しかしこれからは、むしろ現状を壊すことの方に希望を見出す人の割合が増える社会にこのままではなってしまいます。私はむしろそちらの方が面白いと思ってしまうような人間ですが、このまま政府が何の対策もしないなら、本当にそんな社会がやってきてしまうだろうと予告しておきます。

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