今日の朝、WBCでの日本対アメリカ戦を見て、日本の「野球」とアメリカの「BaseBall」とはかなり違うなと思った人も多いことでしょう。タッチアップの離塁が早いという抗議が通った時のアメリカチーム監督のガッツポーズというのは、日本の「野球道」とは相容れないものでした。
日本ではその昔、旧制一高の選手が試合中、審判が自分に有利な判定をしたにも関わらず、自分で判定が間違っているといって、自ら審判の判定を覆したことが美談として長く伝えられていました。まあ、そうした美談の押しつけが、高校野球の駒沢大学苫小牧高校を出場辞退にまで追い込むような日本独自の野球道へとつながっていくのですが。アメリカの方はそうしたわけのわからない思想の押しつけがないかわりに、勝つためなら何をやってもいいとまではいいませんが、かなりエキサイトして勝利に向かって突っ走るような感じがあります。
それにしても今回の試合は後味が悪いものでした。近くで見ている審判のジャッジを遠くで見ていた審判が訂正するというのは、私も見たことがありません。もし監督が王さんでなかったら、選手を引き上げさせて没収試合も辞さないようなやり方もあったかと思いますが、王さんはやはり野球道の考えをしっかりと持っていらっしゃったのでしょう。ここは耐え忍んで、この後2連勝してぜひ準決勝でアメリカに雪辱したいと強く思っていることでしょう。
その事とは別に、これら一連の審判とのトラブルというのは、WBCという大会そのものにとってとても危ういものです。今回の審判団は、マイナーリーグの審判が中心ということで、レギュラーシーズンで厳粛に選手や監督に対応してきた人たちはジャッジをしていません。今日の日本との試合でのジャッジを見ると、これからアメリカと対戦するチームは、頭のどこかに、もしかしたら自分達に不利にジャッジされてしまうのではないかと思ってしまうかも知れません。それが、全く普通のジャッジであったとしても、もしその結果アメリカに有利な判定が出たことがきっかけでキューバでもドミニカでも切れてしまって大乱闘なんて事になったら、大会の存続だけでなく、野球の世界的普及という元々の目的さえ危うくなりかねません。確かに大会前から多くの問題点が指摘されていましたが、これ以上ごたごたが起こらないのを祈るだけです。