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スーパーモーニング

 今週は昨日まで夜はずっとNHKBS2で放送された山本薩夫監督特集を見まくっていました。「金環蝕」「不毛地帯」「白い巨塔」「華麗なる一族」というラインアップでしたが、どの作品も世の中の不条理な仕組みをあぶりだすような作りになっています。政府が集めた税金が大きなプールに満たされた水だとすると、プールから水を移す際、その容器に穴がたくさん開いていて、そこからこぼれる水を不正に取得する輩こそが問題であるという感じがするような作品群でありました。本日のコメンテーターとして登場したテレビ朝日の玉川記者は、税金の無駄遣いを追求することにより、いかに穴の開いた容器から水が漏れないようにするかについての問題提起を行なったということで、視聴者受けが良かったのだろうと思います。しかし、先週から引き続き貯蓄税について述べるさまは、そうした経緯をなしにして、いきなり「消費税と貯蓄税ならどちらがいいのか?」という二者択一から特集に入っていったのでした。続き

 先週からかなりテレビ朝日には批判を中心にした意見が寄せられたようで、番組ではその批判に答えるということでした。視聴者も無批判に前回の放送を見ていたわけではないようで、的確に貯蓄税導入に対するディメリットを指摘していました。ただ、その答えについて、全てクレディスイス証券の白川氏のVTRでの意見を流すのみで玉川記者は直接答えませんでした。具体的に白川氏はどんな答えをしたのかということをここで紹介しておきましょう。

 まず、預金に税金がかかるならタンス預金が増え、犯罪が増えるのではという問いについては、徹底的にタンス預金の危険性をアナウンスすることでそれほどお金を下ろす人はいなくなるのではと言うことでした。そんなに簡単にいくなら、あれだけ振り込め詐欺について注意を喚起しているにも関わらず、今だに多くのお金が詐欺師の手に渡っている現実についてわかっていないのではないかとすら思えます。そもそも、家にお金を置いておけば盗まれる危険性があるので、お金はかかっても銀行に入れておいた方がいいよという論理自体に無理があるのではないでしょうか。人々の中には税金に取られるくらいならとお金を家に置いておく人はそれなりにいるでしょうし、預金が減ることによる銀行への影響も考えられます。

 次に、節約して真面目にお金を貯めてきた(当然、そこに至るまでにきちんと税金を払ってきた)結果のお金になぜ二重に税金を掛けるのかという批判には、驚くべき回答を白川氏はしてきました。どちらにしろ政府の財政は逼迫状態で、社会保険などの存続すら危ういのだから、ここで税金を取るような仕組みを作らないと将来の社会保障は全くなくなってしまうとまさに庶民を脅迫するような事を言ってきたのであります。マスコミが言う借金漬けの財政というのは本当に深刻なのかという点についてもさまざまな意見があります。そこを検証しないでいきなり増税に話を持っていくこと自体、乱暴な議論だと私は思います。

 これらの回答を見ればおわかりの通り、2つのディメリットについて納得できるような解答をしていないように思います。この特集を組んだ人たちは、水漏れ状態を放置したままどんどんお金を集めることを良しとする、まさに前時代的な考えを押し付けるような形で新たな税金を提案してきているのです。

 もしあえて、税金を上げなければならないとしたら、企業の法人税とか、消費税でも食料品や日用品は非課税にして他のものについて現状より税率を上げるとか、庶民の暮らしに影響しにくい方法もあるでしょう。さらに、もし貯蓄税が導入されたと仮定したとしても、それをすぐに株式や不動産投資に振り向けようとする白川氏の意見は、まさに自社の業務に関する利益誘導で公平性を欠きます。お年寄りなどが不慣れな証券投資で大損してもこうした証券会社は聞く耳を持たず虎の子の老後の資金をむしりとって行く状況が目に浮びます。せめて無利子の国債を発行することで、資産の目減りを防いで税金も取られない(しかも不足する財源を直接補填できる)ような方法もあるのに、これについて出演者の誰も一言も触れなかったという点についても不信感が残ります。

 この特集は来週もあるそうですが、恐らくまた批判が来るのではないかとコメンテーターが言ったら、すかさず司会のアナウンサーが、批判は減っていくのではないでしょうかと、テレビの向こう側にいる人たちの心象を害するような言葉を言い捨てて今回は終わりました。白川氏は貯蓄税について、議論していてズルズルと引き伸ばしているよりは、テストするような感じでどうなるかやってみたらと提案していましたが、それなら政府紙幣を発行して国民一人一人に定額を支給するベーシックインカムを試すほうがはるかに興味深いような気がするのですが。

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