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スポーツ大陸 大逆転スペシャル「絆でつかんだ栄冠~長野五輪 ジャンプ団体~」

 来年は早々から冬季オリンピックが開催されるということで、テレビ番組も過去の冬季オリンピックを題材にしたものをこの時期放送しています。その中でも長野オリンピックのジャンプ団体は実に印象に残るシーンの連続でしたが、中継映像のみではわからない競技の裏側、テストジャンパーに焦点を当てたというこの番組は、実に興味深く視聴することができました。続き

 ジャンプ競技は屋外で行うため、どうしても天候の影響を受けます。刻一刻と変わる天候の中、できるだけ同一の条件で競技を行なうため出発するゲートを決めたり、競技続行そのものの検討資料とするため、テストジャンパーの力がどうしても必要となります。長野オリンピックのジャンプ団体戦の日はかなりの悪天候で、一回目を終えて日本は4位。このまま競技役員が一回目のみで競技を中止すれば日本のメダルはありません。役員はテストジャンプの結果を見て競技を続けるかどうかを決めると結論を先延ばしにしたのでした。

 そういうわけで、カメラは同じようにオリンピック代表を目指したもののその道を閉ざされたテストジャンパーに向けられます。前回のオリンピックで代表だった長野県出身の西方仁也選手を中心にして当時の様子が回想されます。長野オリンピックのテストジャンパーというと、私は耳が聞こえないハンディを持ちながらオリンピック直前の日本で行なわれたSTVカップで優勝した高橋竜二選手を思い出しましたが、番組ではきっちりと彼にも取材していて嬉しくなりました。

 テストジャンパーは25名いたのですが、最初の人達は助走路の雪を固めてスピードが出るように間髪を入れずに飛び、その後、西方選手や高橋選手のような力のある選手がオリンピック出場選手程度の距離を転倒することなく出すことが、競技再開に向けた条件でありました。当時はもちろん生中継を見ていましたが、そこまで現場が切羽詰っていたとは全く思っていませんでした。高橋選手は競技役員が注目して見つめる中、何と131メートルの大ジャンプを飛び、最後の西方選手も123メートルという十分な飛距離を出します。むろん、現場やテレビの前で早く競技を再開しろとしか思っていないような私のような人たちには、彼らのこうした熱い魂のこもったジャンプが行なわれていたことなど全く興味の外だったことでしょう。テストジャンパーのおかげで二回目の競技が行なわれ、日本チームが逆転で金メダルを取りますが、こうした事実がわかっていれば、二回目が行なわれると決まった時点で、日本チームの面々はすでにもらったというような気分であったため、あれだけの素晴らしいパフォーマンスが生まれたのだろうと考えることができます。

 どの世界にも華やかにスポットライトを浴びる人達がいますが、そうした人達が輝けるのも、多くの周辺の人たちの力を無視することはできません。この番組では紹介されませんでしたが、テストジャンパー以上に力を尽くしたのは、次々と降り積もる雪の除雪を行ない、テストジャンパーが飛べるだけのコンディションを作り上げたジャンプ台整備のためのスタッフの方々であることも事実なのです。一つの見方だけでなく、裏方から見たオリンピックを見事に映像として私たちに見せてくれました。来年のオリンピックも表面的な成績に一喜一憂するのではなく、そこまでに至る経緯にも注意を払って見てみたいと思います。

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