春夏の甲子園でその実力を示し、一躍注目の選手となった岩手・花巻東高校の菊池雄星投手。その進路が日米どちらになるかということでまた注目を集めています。これについては本人の希望および、周辺の方々の助言により決することでしょうが、最初から日本球界のみに門戸を開くのではなく、アメリカメジャーリーグの球団とも接触をしている(もちろん、それだけの力を多くのチームが認めているからでしょう)のは、やはり海外でやってみたいという希望も持っていることの表われでしょう。ここで、菊池選手があくまで地元の方々に見てもらいたいという意思があったとして、現状では日米どちらに進んだ方がより地元(岩手県の方々)を盛り上げることができるのか考えてみたいと思います。
今、私たちがプロ野球を球場に行かずに見るには、テレビ(地上波・BS・CSなど)、インターネット中継(パリーグはネット中継で生で見ることが可能)ぐらいの選択しかありません。テレビに対して多くの方々がどれくらいの意識を持っているのかわかりませんが、受像機やアンテナはともかく、番組の視聴そのものにお金を出すという意識はまだないだろうと思います。つまり、地上波かBSのテレビぐらいまで、インターネットは無理でしょう。そんな現状の中、生放送で登板する試合を中継してくれるのはどこかということになると、これは圧倒的に米大リーグなのですね。日本のプロ野球ではどこに入ることになるかわかりませんし、中継のある読売ジャイアンツでさえ、テレビ中継はなくなってきています。米大リーグなら、たとえそれがどの球団だとしても、メジャーに昇格さえすればその雄姿を地元だけでなく日本全国で楽しむことができます。米大リーグに挑戦することになってもテレビ中継まで上がってこられるかはわかりません。しかし、日本で一流の投手になったとしても、日本のテレビでの露出度は相当に小さいのです(日本ハムのダルビッシュや、楽天の岩隈のレギュラーシーズンでの投球を多くの人は見られないのですから)。私はこうした情報のねじれが、菊池投手の興味をアメリカへ向けさせているのではないかと思っています。
話はちょっと変わりますが、今日の朝、実に驚愕するスポーツ関係のニュースが入ってきました。体操の世界選手権の女子個人総合で、鶴見虹子選手が銅メダルを獲得したというのです。男子の内村航平選手の活躍は北京オリンピック銀メダルという実績から期待されていましたが、鶴見選手は今大会の目標を入賞に定めていたということからわかるように、周辺からの期待もそれほどなかったのだろうと思います。それにしても醜いのが、放送権を獲得したフジテレビの扱いでした。内村選手の出場する男子は地上波で生中継したのですが、女子では結局地上波での生中継はカット。CS放送での中継のみでした。番組表をチェックすると、生放送はすでに終わった男子の個人総合のみのようで、今日以降もダイジェスト版で日に1時間も放送しないありさまです。局は違いますが、世界選手権ではないフィギュアスケートは2時間もかけて放送するという事もありますね。体操にはそれほどスポンサーも付かず、視聴率も期待できないということなのでしょうが、それでも各種目の世界選手権ぐらいは放送権を持っているところはしっかり地上波で流すべきではないでしょうか。おかげで、事前にCS放送に加入している人以外は鶴見選手の演技を見ることはできませんでした。私はその様子がYouTubeで配信されていたので見ることができましたが、実にミスのない素晴らしい演技で、もっと沢山の方々に感動を持って見てもらいたいと思わせるものでした。
今のテレビは何よりもスポンサーが大事で、資金的な援助がないものは顧みられない反面、あからさまな企業PRのような番組、露骨な番組宣伝(主にドラマ)が目に付きます。ドラマはドラマとして結構なのですが、やはりごまかしのきかない真剣勝負にこそ、ドラマがあるわけで、折角放送権を持ち、しかも深夜でとりたててつぶれる番組がないのにも関わらず中継しないというのは、お金にならないものは徹底的にやらないという今のテレビ局の姿勢を表わしているようです。これを書いている今、BS7では楽天とソフトバンクのクライマックスシリーズを放送していますが、こういうものもできれば地上波で流すべきものだろうと思います。そうした事も考えながら、菊池選手の選択には注目してみようと思っています。