テレビ局も秋の改編期に入り、バラエティ番組中心のラインナップになっています。スペシャル番組好きにはたまらないのかも知れませんが、個人的には御勘弁いただきたいということで新聞のテレビ欄を見ていたら、何と出演者のところに「渋谷毅」の文字が。何かの間違いかと思いましたが(^^;)、渋谷さんのピアノが、しかも東京フィルとの共演で聴けるチャンスなどお金を出してライブにいったとしてもそうそうあるものではありません。渋谷さんのブログを読んだら、オーケストラと共演できるなんて本人も思っていなかったとのこと。そういうわけで期待しつつ見たのでありました。
ゲストはビリーバンバンと茉奈佳奈でしたが、双子の姉妹が朝のドラマ主題歌を荘厳に歌い終えた後、唐突に渋谷さんが呼び込まれて登場。その姿はアケタの店などライブハウス出演時の格好と全く変わらず、ジーンズに白の長袖シャツ。「Danny Boy」演奏後、司会の渡辺徹氏に「ピアノを片付けに来た人かと思った」とコメントされたことからわかるように(^^;)、会場の観客も「何だこの人?」といった感じを持ったのではないでしょうか。
もちろん渋谷さんのゆったりと弾く美しいメロディが流れたとたん、そんな雰囲気はいっぺんに消し飛んでしまい、オーケストラとの融合も実にはまっていて、テレビの前ではありますがその姿にみとれながら聴いていました。その後、ビリーバンバンとのコラボで浜口庫之助氏の「みんな夢の中」を伴奏され、フィナーレでは「威風堂々」を。渡辺氏との絡みでもあくまでもマイペースで、これもライブハウスいる時のように、演奏そのままの人柄をうかがわせる姿を見ることができ、地方在住でなかなかライブを見に行けないこちらとしては実に幸福な時間を過ごさせていただきました。
インタビューの中で御自身の演奏を「省エネ奏法」と言ってらっしゃいましたが、さまざまな音を詰め込んで強制的に入ってくる電子音と対極をなす、省エネ奏法なればこその音の「間」というのはやはりいいものだと思いますね。同じジャズでもテクニックによる早弾きの魅力もありますが、渋谷さんのような気取らない普段着ながら心の休まる音というのは本当に貴重です。どうしてこの番組に呼ばれたのかわかりませんが(^^;)、こういう音楽をテレビで出してくれて、たまたま見ることができて本当に感謝です。また機会を見付けて本当のライブへも強烈に行きたくなりました。