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日食観測ツアーの功罪

 いよいよ日本で皆既日食が見られるということでかなり盛り上がっていますが、あまり気持ちのいいものではないニュースが入ってきています。トカラ列島で皆既日食が長時間見られるということで人が集中しているものの、正規のツアーでない人たちが島に入り込んでいて、地元や旅行代理店の方々が島からの退去を促しているとのこと。(以下、
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/natnews/science/279436/ 
からの一部引用)

 村では皆既日食の際、ツアー参加者以外の来島自粛を呼びかけているが、法的に阻止する手段 はないため、今月に入って自粛を無視して入島する人が出始めた。ツアー代金には水道設備の増設や医師・看護師の増員などインフラ整備費が含まれており、“自粛破り”を認めてはツアー参加者との間に不公平が生じるとあって、各島で代理店や自治会が退去を求めて説得活動を行っている。

(ここまで)続き

 さまざまな考えをお持ちの方がいるかも知れませんが、現状では強制的に排除させるだけの根拠まではないようですね。ここで私が問題にしたいのが『“自粛破り”を認めてはツアー参加者との間に不公平が生じる』というところです。もう受付はとっくに終了していますが、以下のページが問題のツアー明細を紹介しているページです。

http://www.knt.co.jp/eclipse/detail/tokara_tour/tokara_tour.html

 こちらのホームページを参考に検証を加えていきます。まず、十島村のホームページら抜粋したという基本原則があります。

基本原則
1.住民生活を守る。
7つの小さな島に620名の人が暮らしています。島に多くの人が来ることで、そこに暮らす住民の生活に支障をきたしてはならないと考えます。

2.自然環境を守る。
各島には豊かな自然が残されています。これは十島村の宝であり、守るべきものだと考えます。

3.観測者の安全を確保する。
多くの観測者にとって十島村への訪問は初めてのことと思われます。不慣れな方でも安全に島に滞在していただきたいと考えています。

4.観測者が島に滞在するために必要な環境整備(テント、水、食事等)は受益者負担とする。
観測者を受け入れるための環境整備には相当の経費を要します。こうした経費は、受益者である観測者の皆さんに負担していただくことになります。

(引用ここまで)

 特に4の「観測者が島に滞在するために必要な環境設備」として、村ではテント・水・食料を受益者負担とするとありますが、トイレで使う水についてはツアー代金での負担もやむを得ないとして、持参も可能な環境設備込みのツアー料金の値段が気になるところです。ちなみに、悪石島への最安ツアー料金は一名\344,000(体育館か校庭のテント利用)となっています。もうすこしこちらのプランの内容を掘り下げて見ましょう。

 こちらのツアーは那覇発となっていて、初日の月曜日に奄美大島で一泊(ホテル宿泊で食事3食とも提供なし)、翌日21日から悪石島に入ります。テントか体育館で宿泊し、島を離れる22日の夕方まで二泊5食を提供し、鹿児島港で解散というもの。この料金でどこまでサービスが提供されるのか、ページから引用しておきましょう。


・旅行代金には日程表記載の運送機関(船代:フェリーとしま、送迎車)、宿泊費(キャンプ用マット代含む)、食事代および消費税等諸税。

・ミネラルウォーター(ペットボトル500ml.)1日につき5本

・観測者受容れの為の環境整備代 

※観測者の皆様を受け入れるための環境整備には相当の経費を要します。皆様が島で滞在するために必要な環境整備(テント、水、食事、仮設トイレ、仮設シャワー等)は受益者負担としてご対応いただきます。
十島村役場からの基本方針について、ご理解くださいますよう、予めご了承ください。
これらの費用はお客様の都合により一部利用されなくても原則として払い戻しはいたしません。

・温泉施設利用料

(引用ここまで)

 ここで、こちらでは料金の計算のしようがないのが「観測者受容れの為の環境整備代」のうち、上記のところで記載のないものです。もっとも、島の方や旅行代理店の方が必死になってツアー客以外の入島の自粛を要請しているところからみると、ツアー料金を高く設定しすぎではないかという批判も当然出ているのだろうなという推測はできます。個人的には、テントや飲料水、食料は持参し、シャワーや入浴も我慢することを前提にもう少し安くツアーを提供できたのではないかと思えますね。ちなみに、ツアー客であっても自炊は禁止(火事の危険性をなくすため)とのことらしいので、食料は水で戻すものやカンパンなど質素なものになるでしょうが(それも、火を使わないでお湯を作ることができる防災用品もあるので、カップヌードルやフリーズドライ食品も可能かも)、それも皆既日食を長時間見るためには十分我慢できるものでしょうし。

 そういう形のツアーにしておけば、ツアー以外で島にやってきた人がいたとしても、環境整備代を含めた形でのキャンプ場所の提供(もちろん事前の抽選になったでしょうが)などをすれば、定員オーバーの際にはきっぱりと入島をお断りする根拠はできたと思います。

 個人的に思うのは、せっかく移動自由な国内で皆既日食が見られるのに、ツアー代金からいえばお隣の中国へ弾丸ツアーで行った方が安いような状況が一部地域において生じていることです。奄美大島では入島制限はないようですので、お金はないけど皆既日食は見たいと思っている人たちはトカラ列島ではなく、奄美の方へ入っているでしょうが。明日の天気も心配ではありますが、今回の事でツアーの舞台となった島々の印象が悪くなりはしないかと心配になります。

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