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現場主義のこころ

 あれからもう18年になります。18年ということは、その当時に生まれた人たちがそれなりに社会へ出ていってしまうほどの時が流れたというとになりますね。いつまでもこの世からいなくなった人の事など語らずに、運動に邁進した方がいいと怒られそうではありますが、年に一回の事ですし、勘弁していただければと思います。今日は竹中労さんの命日です。続き

 私が竹中労さんの事を存じ上げる前までは、テレビや新聞、雑誌などごく間近に触れるものでしか社会との接点がありませんでした。ちょうどその頃は、竹中さんはあらゆるマスコミから遠ざけられていた頃だったと思いますので、地方都市で生活する中、よくその文章に遭遇できたものだと思います。

 私はそこで、テレビや新聞の中で繰り広げられている事が世の中の全てではないということに気付かされました。そして、むしろマスメディアからはみ出たところにこそ真実があり、面白いものだということも。特にテレビの箱の中で起こっている事を、肯定的にとらえるか、その裏面を想像しながら批評眼を持ちつつ眺めるかによって全く世の中が違って見える事に驚かされました。それが竹中労さんらが主催した月例セミナーへの参加といった行動へとつながっていったわけです。

 こうした考えは今でも十分に通用するのではないかと思います。これもだいぶ前の話になりますが、阪神淡路大震災が起こった後、たまたまとある団体のお手伝いで被災地に救援物資を運ぶことになりました。実際に行くまではテレビの中で起こっている事しか知識がなかったのですが、現地の様子を見て、壊滅的な打撃を受けている町並みを想像していましたが、そうしたところの道を一本隔てるとほとんど日常の町並みを留めている風景も垣間見えました。改めてテレビ(新聞などの写真も含みます)というのは箱の中に収まる一部の現象しか見せていないのだなとしみじみ思った次第です。わからなかったらその場へ行くという当たり前の事をやらないと、巧みに情報操作によって騙されてしまいます。竹中労さんはあくまで現場主義を貫いたルポライターでした。私自身到底及ぶところではありませんが、伝聞ではない現場に基づいた発信をこれからも心がけていければと思っています。

追記

 以上の文章を書いたのは本日の午後でしたが、夜になって太田龍氏の訃報が入ってきました。午前5時30分、腹膜炎のためとのことです。御冥福をお祈りします。

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