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「親切」の本質とは?

 パキスタンからアフガニスタンにかけて活動しているNGO団体ペシャワール会に属する農業技術者、伊藤和也さんの拉致事件は、彼が亡くなるという最悪の結果が報道されました。遺族の方にとってはさまざまな想いが渦巻くような状態だと思いますが、今回の出来事によって、改めて国外における奉仕活動のあり方について熟考する必要を痛感するところです。続き

 ペシャワール会がどういう団体かということは、多少テレビニュースで紹介はあるのでご存知の方も多いと思います。会の運営方針としては、今回も陣頭に立った医師、中村哲さんの本を読んだ印象からすると、かの月光仮面の作者である川内康範氏が理念とした、「憎むな、殺すな、赦(ゆる)しましょう」に近いのではないかと私は思っています。したがって今回の事件の後であっても活動自体はやめない(現地のアフガニスタン在住スタッフを中心にということはあるでしょうが)という方向については、ある程度予測できたことでした。活動を続ける事についてとんでもないと思われる方がいらっしゃるかも知れません。それについては、相当の覚悟が会にあることでしょうし、私個人的な考えとしては、以下に紹介する坂口安吾氏の文章が参考になります。氏の「エゴイズム小論」というエッセイが青空文庫で読めますが、その中に以下のようなフレーズがあります。

(全文は http://www.aozora.gr.jp/cards/001095/files/42907_23102.html で読めます。以下引用)

親切にしてやつたのに裏切られたからもう親切はやらぬといふ。そんな親切は始めからやらぬことだ。親切には裏切りも報酬もない。

(引用ここまで)

 かくいう私にはここまで覚悟した「親切」や「奉仕」というものをやるだけの覚悟はありません。ただ、今回犠牲になった伊藤和也さんは坂口安吾氏の言う親切の意味を理解した上で現地に入っていったのだろうという事は想像できます。

 今回の事件が起こったアフガニスタンの状況は、まさしく日本の幕末期のごとく、復興のため開国か攘夷かという中でさまざまな思惑が混在していて、治安もかなり悪くなっています。かつての日本がそうだったように、こうした考えをあくまで部外者である日本が変えることはできないでしょう。ただ、今回の事件を契機に、アフガニスタン国内でさまざまな議論が噴出し、攘夷でない開国を受け入れるだけの状況になることを私は希望しています。

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