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日本ジャズの行方に危機感を覚えた

 私の地元、静岡県で聴くことのできるAMラジオのジャズ番組、「インビテーション・トゥ・ジャズ」は、長らくスポンサーが付かない状態で、放送時間も日曜の深夜1時からという不遇な時期が続いていたのですが、最近では何とかスポンサーが付いたようで、放送も日曜の22時からと随分聴きやすくなりました。パーソナリティを務める今村政司アナウンサーは静岡放送を定年退職されましたが、本日の放送内で今村アナウンサーは「死ぬまで続ける」とおっしゃっており、リスナーとしては嬉しい限りです。本日の放送では静岡市出身のジャズ・トロンボーン奏者、村田陽一さんとの対談は大変興味深かったので、ここでその内容を紹介させていただきたいと思います。続き

 普通皆さんがジャズというと、どうしてもアメリカのものという感じを持たれるかも知れません。もちろん番組でもそうしたミュージシャンの曲を多くかけたりするのですが、こうした番組には珍しく日本のミュージシャンを招聘してのコンサートやスタジオトークを出してくれることもあります。村田さんと今村アナウンサーとの対談の中で、この組み合わせで今までじっくりと話をしたことがなかったという事が明らかになり、私などはかなり意外な感じがしました。

 というのも、村田さんがジャズへの興味を持ったきっかけというのが、この番組で今村アナウンサーがトロンボーンの向井滋春さんのコンサートを企画し、まだ高校生だった村田さんがたまたま見に行ったという話を聞いていたからです。コンサート終了後、向井さんと直接お話しをする中でジャズへの道を見すえたとの事でしたが、もし今村アナウンサーがジャズの番組をやっていなかったら、更に村田さんが高校生の時期に向井さんのコンサートを企画していなかったら、村田さんはジャズの方面に進まなかったかも知れないという可能性もあったでしょう。人との出会いというのは何と不思議なものかということが私にも感じられました。

 今村アナウンサーとこの番組では様々な海外ミュージシャンを招聘したり、そうしたコンサートの音源がレコード化されたり、更には民放の賞を受けられたりとさまざまな逸話があるわけですが、私は村田さんをジャズの世界へ引き込むきっかけになったという事自体が功績ではないかという気がします。今回村田さんが番組に出演されたのは、6月7日から浜松で行なわれるハママツ・ジャズ・ウィークの宣伝を兼ねているわけですが、出演者の顔ぶれを見ると、本日の放送で前半に登場された後藤浩二(pf)さんは若いものの、ランディ・ブレッカーさんや佐山雅弘さん、佐藤允彦さんなど、それこそ、村田さんが高校生の時に現役で活動をしていたプレーヤーにまだまだ頼らざるを得ないというのが正直なところだろうと思います。

 ちなみに、前回書いた赤塚不二夫さんと一緒にテレビに出たタモリさんは、山下洋輔トリオのツアーに付いていくような形で東京に出てきたのがデビューのきっかけで、当時まだ30代でした。山下トリオや生活向上委員会などがメディア露出をしていたのがメンバーが20代から30代ということを考えると、今の日本ジャズ界を取り巻く状況は非常に厳しいと言わざるを得ません。私のページからリンクさせていただいている東京・西荻窪の「アケタの店」のスケジュールを見ても、その中心になっているのはことごとく同世代の方が名を連ねています(それはそれで個人的には嬉しいのですが(^^;))。

 このままでは、ジャズを志す若い人が出てきても、その要求に十分応えられるだけのジャズに関する環境がいつまで維持できるのかとても不安になります。もちろん、個人的にはそうした志あるミュージシャンを応援したいと思っていますが、個人でできることには限りがあり、30年以上も民放で続いているこの番組の存在意義というのが改めて重みを持って感じられるところです。

 こうした話は何も静岡だけの話ではないでしょう。日本ではなぜかその土地土地にジャズ愛好家がいて、個人なりジャズ・サークル内でミュージシャンを招聘したりしています。それが日本のジャズ・シーンの特異さとでも言えるかも知れませんが、こうした伝統もどこまで続いていくのかわかりません。ジャズ喫茶が音楽著作権料を払えなくなって廃業を余儀なくされたなんてニュースが過去にありましたが、著作権は守らなければいけないというのは当然としても、その結果、音楽状況そのものが危機に陥るような事が起こっていることもまた事実なのです。

 個人的に、日本のジャズを取り巻く環境をなんとか維持するためにも、静岡放送にはもう少し将来の展望を持って、長寿番組「インビテーション・トゥ・ジャズ」の存続について考えていってほしいものだと思います。一体今村アナウンサーがいなくなったらどうするつもりなのか? 本日の流れから言うと、もしかして村田さんに何らかの形で番組に携わっていただいた方がいいのではないかという気すらします。

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