ウィルコムのW-ZERO3[es]やイーモバイルのEM・ONEなど、Windows Mobile 5.0搭載のUSBホスト機能の付いたスマートフォンにおいて、外付けキーボードをつなげ、ローマ字入力ではなく親指シフト入力(Nicola)をするというのは個人的な念願でした。持ち運びのできる小型キーボードは巷にあふれていますし、折りたたみ式の構造を採用することによって、飛躍的に小さくなった親指シフト用パピヨンキーボード(そのままでは親指シフト入力は無理なので、両側に割れた2つのスペースキーのうち、左側のスペースキーを強引に隣のAltキーと取替え改造したもの)をフライング気味に購入し、いつかこれで親指シフト入力ができないものかと思っていましたが、ソフト的に親指シフト入力を実現するHiroyuki Ogasawara 氏の提供する汎用キーボードユーティリティソフト em1key を使い、em1key のスクリプトファイル oyayubiwm を親指シフトが使えるように書き換えるという、半ば強引ともいえるやり方で実現できることになったのでした。日本語入力コンソーシアムの掲示板でのやり取りの中、普通のキーボードだけではなく、親指シフト用パピヨンキーボードでの利用も可能になりました。このページは、同様にWindows Mobile 5.0搭載機に外付けキーボードをつなげ、親指シフト入力をしたい方に向け、そのノウハウを提供するものです。
上で挙げましたem1key と oyayubiwm の最新版は、Hiroyuki Ogasawara 氏のページである
http://hp.vector.co.jp/authors/VA004474/
こちらのページに揃っています。em1key については、ウィンドウズ用も提供されていますので、まだWindows Mobile 5.0搭載機をお持ちでない方については、PC用のソフトを導入し、その使い勝手を試してみることが可能です。
oyayubiwm では、「無変換」「変換」キーのあるUSB日本語キーボードを想定されて作られています。できることならスペースキーが小さく、キーボード自体もコンパクトなものを選べば、どこでも持ち運びやすくなります。そんな中、フルキーボードと同じピッチにもかかわらず携帯性もあるHappy Hacking Keyboard Lite2の「日本語配列かな無刻印モデル」を私は使用しています。メーカーページは以下にあります。
http://www.pfu.fujitsu.com/hhkeyboard/lite2/
さて、いつでもどこでも持ち運ぶということを考えますと、サイズはA4横くらいあり、700グラムほどのHappy Hacking Keyboard Lite2はちょっと重く感じます。そんな中、登場したのがダイヤテックから発売されたPapillon(パピヨン)キーボードです。製品内容については以下のリンクを参考にしてください。
http://www.diatec.co.jp/products/det.php?prod_c=452
本体のみで175グラムという小さく軽いキーボードは、折りたたみゆえ平らな所でないと使いづらいということはありますが、そこそこ打ちやすいといった感じのキーボードです。左右に分かれたスペースキーを左右の親指シフトキーとして使えれば完璧なのですが、デフォルトでは両方スペースキーとして作動してしまいます。そこで、これを何とかしようと、キーボードショップの「Shop U」さんが物理的な改造をすることにより親指シフトのできる可能性のあるキーボードへと変貌を遂げたのです。改造レポートは以下にあります。
http://homepage3.nifty.com/mstart/dream/oya24.html
「Shop U」さんでは、改造キット付きのパピヨンキーボードや、改造済み(この場合はメーカー補償は受けられなくなりますのでご注意を)のキーボードを販売しています。かくいう私もここで改造済みのパピヨンキーボードを入手しました。私はお店と何の関係もないので品物への直リンクは控えますが、興味のある方はぜひ手に入れて、快適なモバイル環境を手に入れてください。ちなみに、親指キーを打ちやすくするために、左右のキーにスポンジシールを貼り付けました。ちなみにこれは、100円ショップのダイソーにあったすべり止めパッドを上下カットしたものです。これだけでもかなり入力しやすくなりますので、おすすめのパワーアップ方法です。なお、キーボードとW-ZERO3[es]を繋ぐ場合、そのままでは繋ぐことができません。専用のUSBホストケーブルが必要ですので、そちらも合わせてご用意下さい。
ここでは一般の日本語キーボードと、折りたたみキーボード・パピヨンでの設定方法に分けて説明します。
・「無変換」「変換」キーのある日本語キーボード(ここではHappy Hacking Keyboard Lite2)の場合、「:」キーをバックスペースに変え、「Caps Lock」キーと「Ctrl」キーを入れ替える(Happy Hacking Keyboardでは入れ替える必要のないキー配列なので、パピヨンキーボードのみ)スクリプトの変更を行ないます。
oyayubiwm v1.42を解凍して出来るファイルの中のscriptcommand.txtをテキストエディタ(できれば行数表示のできるもの)で開きます。
文書内部の545行あたりにある「●[:*]キーの設定」において、説明にある通り、
define CSW_OASYSBS_ENABLE FALSE
の部分を、
define CSW_OASYSBS_ENABLE TRUE
と変えます。文書を保存して閉じたら、em1key v1.24 をインストールし、「マイ ポケットPC」の中の「Program Files」の中にある「em1key」ファイルに、書き換えたscriptcommand.txtをコピーします。そして改めてem1keyを実行します。これで外付けキーボードからの入力は親指シフト入力ができるようになります。ローマ字入力をしたい場合には、ctrlキーと「0」を押すことによって入力方法を変えることができます。通常のキーボードの場合は作業はここで終了です。
・左親指キーを「Alt」キー、右親指キーをスペースキーにし、独自のボタンキーボードにも別の役割を割り付けることのできる、折りたたみキーボードPapillon(パピヨン)改造済みのものでのスクリプト変更の仕方は以下の通りです。(手順1と手順2は同様ですので、そこまでは同じように変更しておきます)
文書内部の500行あたりにある「●親指シフトキーの指定」の説明通り、左右のキー設定を変更します。具体的には、
define LOS_KEYCODE1 VK_NCONVERT (元の記述)
こちらの行を以下のように変更します。
define LOS_KEYCODE1 VK_MENU #(この部分を変更)
また、こちらの行を以下のように変更します。
define ROS_KEYCODE1 VK_CONVERT(元の記述)
define ROS_KEYCODE1 VK_SPACE #(この部分を変更)
このままでは「Alt」キーが左親指キーにならないので、540行あたりにある、
define LOS_ALT_PATCH_ENABLE1 FALSE(元の記述)
この部分を以下のように変更します。
define LOS_ALT_PATCH_ENABLE1 TRUE #(この部分を変更)
もし、右側にある黄色いボタンに他のキーを割り当てたい場合には618行あたりにある記述を追加します。[Pause] を [OK] にするのはデフォルトですが、[PrtSc] キーを「ひらがな」に、[ScrLk] を「カタカナ」に、する場合は以下のようにキーコード定義を追加してください。
● [PrintScreen] を任意のキーに置き換えます
# WindowsMobile + Papillon 等で便利
# キーコードを定義します。0 で無効
define CMAP_PRTSCR_KEYCODE VK_DBE_HIRAGANA #(この部分を変更)
# ● [ScrollLock] を任意のキーに置き換えます
# WindowsMobile + Papillon 等で便利
# TRUE で有効、FALSE で無効
define CMAP_SCRLCK_KEYCODE VK_DBE_KATAKANA #(この部分を変更)
キーボードの配列によっては、「Caps Lock」と「Ctrl」キーを入れ替えた方が入力の効率が上がる場合があります。私の場合、パピヨンキーボードではこの設定を使いたいので、630行あたりにある記述を変更します。
define CSW_CTRLSWAP_ENABLE FALSE
この部分を
define CSW_CTRLSWAP_ENABLE TRUE
以上のように変更します。このスクリプトのすぐ下に、[ESC]/[半/全] を交換する設定(Windows CEのみの設定)もありますので、キーボードの配列により、使いやすくなる方は変更すればよいでしょう。他にもさまざまなカスタマイズができますので、ヘルプやスクリプト内部の記述を参考に、カスタマイズにチャレンジしてみてください。
同様に文書を保存して閉じたら、em1key v1.24 をインストールし、「マイ ポケットPC」の中の「Program Files」の中にある「em1key」ファイルに、書き換えたscriptcommand.txtをコピーします。そして改めてem1keyを実行します。これでいいわけですが、別のキーボードを使う場合などスクリプトファイルを途中で書き換える場合、通常のコピーペーストで上書きしてうまく動作すればいいのですが、もし正常なキー入力ができない場合は、いったんem1keyを削除し(再起動しないとプログラム本体を消せない場合があるので、うまくできない場合は本体を再起動してください)、改めてインストールしてからスクリプトファイルをコピーするという、最初に行なった作業を繰り返す必要があるかも知れません。どうしてもうまく動かない場合にはこちらの方法をお試し下さい。
最後に、個人的なメモのような事ですが書いておきます。W-ZERO3esは日本語変換ソフトのATOKが搭載されていますが、こちらのページで書いた通り、自由なユーザー辞書登録に制約があります。親指シフト入力と漢字直接入力である超絶技巧入力を両立するため、あえてATOKを使わず、Microsoft IMEを使って日本語入力環境を作っています。そのため、超絶技巧入力の変換方式を登録したユーザ辞書を流し込む必要に迫られたのですが、ここでは、ユーザー辞書の流し込みについて説明しておきます。ユーザー辞書のファイルはWindowsファイルにある「imjp31u.dic」です。これをいったんコピーし、パソコン上にもってきたら、Microsoft IMEのプロパティから辞書ツールを起動します。そこで手入力してもよし、以前から使っている辞書があったら、テキストファイル化したものを読み込ませ、新たにユーザー辞書を作ってしまえばいいというわけです。そうしてできたファイルを本体に戻す場合、標準のファイルエクスプローラだと弾かれるのでGSFinder+を使って流し込めば大丈夫です。はっきり言ってここまでやってしまうと、パピヨンキーボードは少々役不足で、できればHappy Hacking Keyboardで使いたいと思わせるほど通常使いのパソコンキーボードでの入力と同様の使い方ができます。ちょっとした旅で荷物が気にならなければ、私はHappy Hacking Keyboardも持っていくことになるでしょうね(^^;)。
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