こちらのページで出る事を紹介してはいたものの、肝心の自分がなかなか注文できないままでいた「琉球フェスティバル’74」復刻盤ですが、地元のCDショップから取り寄せになり、しかもメジャーレーベルではないので少々待たされてようやく入手しました。たまたま購入した日(2005年12月20日)の夕刊に、ビートルズ日本公演に関する竹中労さんの写真入りの記事が出ていたのはあくまで偶然ですが、せっかくなのでついでにここで紹介しておきます。
記事では、「ビートルズ・レポート」完成までのいきさつが書かれていますが、労さん自身もビートルズと向き合っていく中で彼らへの認識が変わっていたのではないかと思われます。当時のビートルズといえば、ファンである少年少女を含め、保守勢力の格好の批判の的となっていたのですが、批判者の中には必ず「見たり聞きもしないでダメだと決めつける」人たちがいます。労さんの音楽に対するスタンスとして、自ら聴いて良いと思ったものは徹底的に消化し、なおかつ他の人にも積極的に紹介していくという事があります。沖縄島唄についても同様の情熱でつき進んだわけで、その記録が今手元にあるというのは本当に感慨深いものがあります。
皆さん承知の事と思いますが、このレコードも一部の愛好家にとっては歓迎をされたものの、すぐには多くの人に認知されることはなく、昨今の沖縄ブームでようやく脚光が当たった感があります。しかし、大都市のショップならすぐに購入できるでしょうが、こちら地方では数多くある沖縄音楽コーナーの棚にはその存在すらなく、注文しようとしても店員の方もそれほど認知されていないというのが実情です。物には売れ筋があり、若い沖縄ミュージシャンの新譜はすぐ店頭に並びますが、まだまだ本質的に沖縄音楽の良さが理解されていないというのが正直なところではないでしょうか。他のジャンルであれば、新譜とは別に、いわゆる名作といわれているものが廉価で常に在庫があるものであり、まだまだ沖縄音楽にはまだまだ認知を広める余地があるものと思われます。
肝心の内容についてですが、私がわかったふりをして書くよりも、沖縄在住の小浜司さんの書いたものが詳しいので、本人の承諾のもと、「沖縄芸能新聞 ばん」12月号掲載の文章を以下に紹介させていただきます。
ファン待望のアルバム
『琉球フェスティバル’74』(Rinken-2031 TDCD 90935 定価2,500円税込)
アルバム「琉球フェスティバル’74」がRinken
records よりリリースされた。これは、1975年にCBSソニーからプレスされた、1974年8月29日、東京・日比谷野外音楽堂での実況録音盤「琉球フェスティバル’74 日比谷野音ライブ 島うた/その風と水のリズムを」の復刻盤であり、そして今年三月に亡くなった故照屋林助の追悼復刻盤三枚のうちの一つである。
現在、秋の風物詩としてすっかり定着した感のある、琉球フェスティバルは1974年に初めて催された。31年前のことである。その後75年に二度催され、中断した。95年より再開され、現在に至っている。大阪ドームや日比谷野音を埋め尽くす島うた観客を目の当たりにした時、かつて「東京に沖縄解放区が実現した(琉球新報)」と報道した当時では考えられないほど島うたファンは市民権を得ている。
初期の琉球フェスティバルはルポライター・故竹中労(1930〜91)の情熱とエネルギーで実現した、島うたの祭典であった。沖縄音楽(民謡)が初めて本格的に紹介された催しであった。すべては、1974年8月28日、大阪フェスティバルホールに始まり、、翌日の日比谷野音でのライブは熱狂となり、一個の音楽エリアの基礎となりえた。それは本土のみならず沖縄の歌者にとっても大きな自信となってかえってきた。
プログラムは山里勇吉の「鷲ぬ鳥」で幕開け、司会の照屋林助登場。「ウチナーぬ島々のうた、里々ぬうた、だてーんあちみてむっちゃーびたん(沖縄の里々浦々の島うたをとりそろえて持って参りました)」。続いて絶頂期の嘉手刈林昌がうたい、若き知名定男が、大工哲弘が歌い、照屋林助十八番の「職業口説」と続く。これらのタイトルだけでももう財布の紐は緩んでいるところへ、国吉源次の若々しい声が響き、すっとぼけの金城睦松「ましゅんく節」、ダメ押しは「トバラーマ」。何度聴いても感動せずにはいられない時代のドキュメントがそこに在る。よくぞこのような音源を残せたものだとつくづく感心させられる。70年代、沖縄音楽が沖縄の中で一番勢いのあった頃に、ルポライター・竹中労の情熱と、島うたの巨人らがひとつの方向に向かっていったエネルギーのドキュメントの復刻は実に嬉しい限りである。
惜しむらくはデジタル音にするに当たって、もう少しノイズ処理と音の化粧を施して欲しかった。ただ音の復刻ではなく、デジタルリミックスは必要ではなかったか。ライナーノーツにしてもコピーではなく、画像処理も必要だったと思うが蛇足かな。(こはま・つかさ 音楽ライター)
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