安吾に興味があって読みたいと言うとき、最も手軽に読めるのが文庫本の存在でしょう。ただ、ちくま文庫の全集には手が出ないということになると、本屋さんへ行ってめぼしい作品を見つけるということになります。以前は角川文庫でかなりの作品が文庫化されていましたが、現在は『堕落論』、『肝臓先生』、『不連続殺人事件』(?)ぐらい、また新潮文庫では『白痴』。一番揃っているのはやっぱり講談社文芸文庫という事になるのですが、新刊本を焦って購入する前にちょっと古本屋さんを回ってみませんか。実は今日、古本屋さんの常識を破った郊外型大型の古本屋さんへ行ったら、上の写真の右から二番目にある河出書房『安吾新日本風土記』を定価の半額250円で入手したのです\(^o^)/。このシリーズは写真のとおり、『安吾新日本地理』、『安吾史譚』、『安吾新日本風土記』、『日本論』の四冊となっています。これらのうち、安吾には『日本論』と題された作品はありません。しかし、日本に関する安吾のルポルタージュやエッセイを集めた編集になっていて、現代にも通ずる思想がちりばめられ、これを手ごろな値段で読めるというのはなかなかおいしいのです。今回購入したものは再版で平成1年発行ということですから、ちょうど古本屋さんに出る頃なのかもしれません。安吾の小説よりエッセイのほうが好きだというと、当の安吾は怒りだすかもしれませんが(^^;)、この四冊には日本に関する安吾の思想が網羅されているといっても過言ではありません。さらに、今回購入した『安吾新日本風土記』ですが、ちくまの文庫全集にも収録されていない『桐生通信』や、未完に終わった高知への旅の様子を綴った竹内一郎氏の文章が掲載されています。個人的には『安吾巷談』あたりも一連のシリーズに入れて欲しかったですが、安吾的歴史観をこれから読み始めたいと思われる方にはとてもいいテキストになると思います。
で、実際には左の写真のような感じで本の背を目当てに探すことになります。私が購入したところでは河出書房の本がこのようにまとめて並んでいたのですぐに見つけることができましたが、ばらばらになった中から探すこともありますので、この状態を覚えておいていただければ、もしかしたら見逃すことはなくなるかもしれません。1番左のものが今回購入した再版物で、後のものはリアルタイムに買った初版です。初版と再版以降では扉の絵は同じですが、多少背の部分が違いますので、返す返すもお見逃しなきよう(^^)。これに味を占めたら、次は角川の絶版文庫本を集めるというのもいいですね。先述の『安吾巷談』は角川で出版されていましたし、徐々に集めて読んで行くというものもなかなか趣きがあるものです。さしあたっては角川の絶版文庫本より入手しやすく、しかもそれぞれが読んで面白い河で文庫の四冊をご紹介しました。(2000.7.15)
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