ちょうど旅館の名前が隠れてしまっているのですが『あさま苑』という一軒宿です。昔は富士見館といっていたらしいのですが、安吾が泊まったのは昭和10年、二十九歳の時でした。そこで出るのが鯉と茸ばかりで、全く辟易したそう。しかも、そこで出る茸が何の茸かわからない全く不気味なもので、なおかつその茸を取ってきた茸取り名人が、茸にあたって往生を遂げてしまったということなのですよ(^^;)。しかし、今はそんなことはありません。隣に併設されている施設にはハーブガーデンがあり、レストランではハーブティと本格的なスパイスの利いたカレーが食べられます。安吾はこの地に『ラムネ氏はいなかった』と書いていますが、たぶん当時の経営者の孫の代になってどこからともなくラムネ氏が現れたのでしょう。 玄関を入ったところにあるスペースです。昔は食堂だったのでしょうか。今は別の場所に食堂はあるようですが、ここで安吾は鯉と茸を食べたのかもしれません。しかし、この旅館は今は高校や大学の合宿に使われているらしく、安吾の書が飾ってあるとかそんなことは全くありません。色紙の類は学生の寄せ書きの類ばかりで、ファンとしてはもっと何とかしてくれればいいのにとも思うのですが、そうでなければ安吾のいた当時の雰囲気が残っていないのも確かなのかもしれません。 旅館内部の建物はそれほどでもなかったのですが、風呂だけは歴史を感じさせてくれました。おそらくこの感じだと、安吾も入ったのではないかしらん。まず脱衣所の様子ですが、いきなり体重計が壊れていました(^^;)。 今は鉱泉とは呼ばず、温泉と言う名称になっていますが、ここは源泉を加熱して入ります。写真が源泉ですが、この色と周りについた苔のむすさまを見てください。これはもう、安吾も浸かった鉱泉です。ちなみに源泉の温度は20度。夏だったら気持ちがいいかもしれませんね。 さらにもう一つ源泉の流れ出る口を。岩の色が変色していることからもわかるとおり、かなり成分の濃い鉱泉です。さすがに加熱していないこの浴槽は下に成分が沈殿していました。温泉ファンでもある私にとっては二重の喜びでした。 こちらは加熱してある岩風呂です。ちょっと見にくいですが、お湯が濁っているのがおわかりになるでしょうか。露天風呂はありませんが、窓を通してアルプスの山々が一望できます。今回は日帰り入浴で400円払って堪能してきました。長野県の小諸から車で20分ということなので、興味のある方は出かけてみてはいかがでしょうか。
奈良原温泉 あさま苑
ハーブガーデン コットンテール
TEL 0268-62-2809
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