『安吾新日本地理・秋田犬訪問記』

 

秋田犬の色紙

 伊東に住んでいた安吾は犬好きで、コリーを飼っていてひどく可愛がっていたとのこと。コリーといえば『名犬ラッシー』を思い出してしまうのですが、ああいう利口な犬と日本犬一般を比べているのはちょっと日本の犬に対して酷な感じがします。そうした日本犬の中でも別格という秋田犬の産地、大館を訪ねたのが表題の『安吾新日本地理・秋田犬訪問記』というわけ。このような色紙を残すぐらいですから(写真の色紙は残念ながら複製です)、それなりに感じ入ったものがあったのでしょう。ちなみに、東京渋谷に銅像のあるハチ公が秋田犬としてつとに有名です。
 私も何とかして秋田犬と会い、安吾が秋田で辿った足取りを追いかけようと思い、大館から秋田まで出かけてきました。滞在が短かったので思うようにいきませんでしたがそれなりに感触はあった今回の旅、皆さんもご一緒に体験ください。


東大館駅

 まず、最初に降り立ったのは大館駅の手前、東大館駅でした。後から行った大館駅とは違って観光案内所もないし、駅前も淋しい状態でした。ここからスタートしてテクテク歩き、地元の人がどんな犬を連れているか観察しようというわけ。果たして、どんなことになりますやら。

マンホールの犬1

 まず最初に見つけたのは、こんな犬です(^^;)。着いた時間が午後1時過ぎということで、犬を散歩させている人がなかなかいなかったんです。

マンホールの犬2

 2匹目はこれ(^^;)。大館市はきりたんぽと秋田犬が有名なので、至る所に犬の絵などがあるのですが、依然として本物の犬を見かけません。

マンホールの犬3

 そろそろ文句を言われるかもしれませんね(^^;)。でも、いないんだからしょうがないんですよ。でも、マンホールの犬の中ではこれが一番可愛かった。

ビクターの犬

 で、ようやく本物の犬を見つけたと思ったのですが、どうも何か違う。まあ、この犬は有名ですから皆さんもご存じでしょうが、とある電気屋さんでのスナップです。

秋田犬会館

 さて、冗談はこのくらいにしまして安吾の大館での行動をチェックしてみましょう。秋田犬を見るのは今も昔も難しかったようで、安吾は秋田犬保存会の人の案内でいろんな犬を見たとのこと。その秋田犬保存会が独自に運営しているのがこの秋田犬会館です。実物はいないものの、剥製や石膏で固めた犬、また毛皮とか過去の優秀犬の写真など、秋田犬に関する様々な展示があります。一番最初の安吾の色紙もこの会館に展示してあるのです。
秋田犬会館データ 電話0186-42-2502
開館時間 午前9時から午後4時まで
休館日  11月21日から4月20日までの土曜午後・日曜・祝日
入場料  大人100円、小人50円

写真の秋田犬

 会館に掲げてある優秀犬の写真の中で割と新しいものを一枚写してきました。後ろの人と比べてみるとその大きさというのがわかります。剥製で大きさを見たところ、私の股下ぐらいの大きさでした。こんな犬を散歩に連れて行くというのは確かに大変で、私の訪れた午後の時間にはなかなか連れていけないのだろうなと思ったりしました。純粋に種を残すため、血族結婚が多くなることで、病気に弱く、なかなか飼育も難しいとのことです。そこまで犬のために愛情を注ぐことができるか、少なくとも素人には難しいという安吾の書いているそのままの感じを強く受けました。

忠犬ハチ公

 こちらは大館駅前にある、忠犬ハチ公の銅像です。戦前、東京渋谷にあるものと同じものがあったとのことですが、戦時中の金属供出によってなくなり、安吾が訪れたときはこの銅像はなかったということです。

本物の犬

 大館の裏通りを歩いて、ようやく見つけた一匹がこれです。体は小さく、人が通ると吠えまくり、まさに安吾が書いていた日本犬の特徴を備えたような犬でした。その後、公園で犬の姿を見ましたが、外国産の犬には出会えませんでした。実際問題としてこれだけ秋田犬発祥の地を宣伝しているところで、おおっぴらに外国産の犬を飼うことができるのでありましょうか。もう少し滞在して大館犬事情をレポートするべきだったかなと今になって思います。

旅館栄太楼

 さて、ここからは大館から秋田へとやって来ました。久保田城のすぐそばにある老舗旅館栄太楼に安吾は泊まったとのこと。エッセイではここから裏通りを通って、本屋を覗いたり百貨店のショーウィンドウにある秋田杉のステッキを見たとの記述がありますので、とりあえず裏通りらしきところを通りつつ、百貨店を目指したのですが……。

古い民家

 たまたま百貨店を目指して歩いていたら、こんな建物に出会いました。竿灯祭りで有名な提灯が展示されている『ねぶり流し館』の隣にあるのですが、観光施設ではどうもないらしく、どうやら普通の家のようです。安吾は秋田の町の裏通りを歩き、その建物に雪国の悲しさをみたようですが、おそらくこの建物は安吾の目に入ったことでしょう。他にも探してきたのですが、昔ながらの建物というのはもはやほとんどなく、この建物が残っていること自体が私にとっては驚くべき事でした。

百貨店のショーウィンドウ

 これが安吾が見たであろうショーウィンドウではないかと思われます。左の張り紙でお気づきでしょうが、現在はダイエーになっています。辻兵・ダイエー秋田店というのが正式名称らしいですが、これも時代の流れというものでしょうかねえ。ちなみにこの日は日本一のセールで全品一割引ということだったので、おみやげをここで求めました。


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