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突撃レポーターの行方

 週末は京都まで出掛けていたのですが、車で出掛けたため帰りの渋滞に見事にひっかかり帰宅が深夜になってしまいました。で、一夜明けたら突然入ってきたのが梨元勝氏の訃報です。同業者のレポーターたちもその事実を知ったのは直前になってからだということに一部では批判もあるようですが、突撃取材を行っていた梨元氏のやり方を実は周辺の方々はあまり良く思っていなかったのかなとも思えます。梨元氏が作った芸能ジャーナリズムの手法について、せっかくの機会でありますので少々書いておきたいと思います。続き

 私のページで紹介させていただいています竹中労さんは梨元氏の手法については批判的であったように記憶しています。テレビカメラとともにマイクを持って突撃すれば、何のコメントも取れなくともその表情や応対する態度などはどうしてもその人の「素」が出てしまう場合があります。梨元氏はそこを突破口にテレビの向こう側にいる人々にメッセージを送りましたが、これは下品だと思ってもつい見てしまうという、私たち見る側の問題を巧みについたやり方でもあったと、今となっては考察を加えることができます。

 私が梨元氏というと思い出すのは、週間少年チャンピオンに連載されていた、漫画家の赤塚不二夫さんが梨元氏そのままのキャラクターを主人公にした「週間スペシャル小僧」(単行本未発売)です。漫画の主人公のような強烈なキャラクターとしての存在感があったからこそ赤塚さんも漫画のキャラとして描いたのでしょうが、彼のこうしたやや強引なやり方は芸能ジャーナリズム自体にも変化をもらたしていったような気がします。

 芸能のスクープというのは以前は週刊誌やスポーツ新聞の記者、テレビレポーターたちの手腕により掘り起こされていたものでしたが、今ではマスコミが発表する前に本人たちが発表してしまう事が多くなりました。それでも、ファクシミリでマスコミ各社に本人がメッセージを送っていた時代はその後の追加取材もしやすかったでしょうが、今では本人たちのブログがまずインターネットで検索され、取材者の意思が入らない情報から入ってくるというパターンが増えています。今も昔も、取材を受ける対象としての芸能人は、自分にとって都合の悪い情報はできるだけ出したくないわけですから、批判がなく自分の意見を一方的に主張できるブログからの情報発信は実に便利です。こうした発信の仕方には批判的な意見もあるものの、今だにマイクを持って取材対象に直撃することが正しい取材の方法だと信じているかのようなレポーターが大勢いることを考えると、こうした一方通行的な流れは当分変わることはないような気がします。それこそが梨元氏が今の芸能ジャーナリズムに与えた影響だと思うのですが、何か悲しいものがありますね。一度付いてしまった人間のイメージというのは恐ろしいものですが、梨元氏はテレビレポーターに転じる前には取材対象者ときちんと関係を持って書いておられたライターだったという報道も出てきています。自分についてしまったイメージについて、これぞ本望だと梨元氏は思われていたのでしょうか。

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