99年8月
- 世界陸上99(99.8.24・TBS)
深夜のスポーツ観戦が趣味の私としては、眠い目を擦りつつも見てしまうのですが、今回指摘したいことは陸上とは一切関係ありません。皆さんは気が付いたかな?
選手のゼッケンを見ますと、『TDK』の三文字がやけに目立つのですが、女子の三段跳びに至っては同じ日本の企業でも、違う文字が踊っていました。私はこれを『空前絶後の無駄な宣伝』という感想を持ちました(^^;)。選手のゼッケンには『mita』の四文字が(^^;)。2056億円の負債を出して1998年に倒産した、複写機製造の三田工業です。恐らく、倒産前に交わした契約を解消することが出来ずにそのままスポンサーの名前だけが残ってしまったわけですが、全く間抜けですねえ。突然の破産で解雇された従業員たちは、どんな思いをしてこの放送を見ているのでしょうか。皆さんも種目ごとの争いとは別に、ゼッケンの文字や競技場の広告にも注目してみてくださいね(^^)。
- 全国高等学校野球選手権大会(99.8.21・NHK総合)
今日決勝があって、長い夏祭りが終わったわけですが、この春の沖縄県勢の全国初制覇に続いて、これも春夏通じて全国初制覇の群馬県の桐生一高が栄冠を得ました。桐生といえばこのページでも紹介している坂口安吾が最後に住んだ地で、その当時から野球が盛んだった土地柄でした。安吾は高校野球が好きで、エッセイにも桐生の高校野球のことを書いています(以下引用)
『どの校庭でも力いっぱい打撃練習できるから、小学校や中学校の野球でもポンポンよく打ってビックリするほどだ。したがって桐生が高校野球では関東きっての名門なのも当然で、小学校から中学校と自然にポンポコ打ってきた中から選んで高校一年生のチームをつくっても、それでもう相当なものだ。いつでも平均的なのがいつでもそろっている。
つまりドングリ名人の十人十五人に事欠くことがない。
ただ一人の名投手が現われればいつでも甲子園に行けるだけの実力は常にある。ところが一人の名投手がめったに現われてくれないのである』(1954年 西日本新聞連載の『桐生通信』より引用)
まったく、安吾の言う『ただ一人の名投手』が現れたということですね。複数の投手を持つチーム作りが今の高校野球の流れからすると正解なのでしょうが、一人で投げ抜いた選手は立派でした。
さて、野球に関してドシロウトの私が技術論云々についてここでこれ以上語っても仕方がありませんので(^^;)、テレビ的に気が付いたことを書いていきましょう。まず、選手より気になったのがバックネット裏に陣取る人たち。私はあの人たちは純粋な高校野球ファンではないと思っています。特に目立っていたのがカーボーイハットにサングラスをした髭のおじさん(^^;)。あのひとは何やら隣の人にうんちくをたれてばかりで、あんまり試合自体を見ていない気がしました。だからこういうところでなく、マスコミでも腫れ物に触るようにというか、あえて触れないようにしていた感じですね。あと目立ったのは、バックネット裏から一塁側・三塁側にカメラが切り替わった時を見計らって、携帯電話を持って画面に手を振る馬鹿野郎が如何に多かったことか。プロの試合だったら警備員がすぐに入ってきて排除するのですが、高校野球ではそういうことはほとんど見られませんでした。最悪だったのは、その髭のおやじのそばにいて、携帯電話の回し合いをしていたおばさんたち(^^;)。ここからも髭のおやじが高校野球好きでないという事がわかります。高校野球好きなら絶対やめさせるでしょうから。
しかし、本当に試合を楽しみたいのなら、バックネット裏でなくて外野席ですよ。人知れずカンカン照りの外野席で全体を見回すような見方をしていた玄人のファンは絶対いたはずです。テレビ的にもそういう人に注目し、テレビに映りたい為だけに甲子園に来る馬鹿野郎は徹底的に排除してほしい。それが高校野球の人気を取り戻すためにテレビがすることだと思いますね。
- いつでも笑みを!(99.8.14・関西テレビ)
土曜の朝のバラエティ番組で、関西制作の番組は東京発の番組と違って面白い部分が多いのでちょくちょく見ています。今回は有馬温泉から例の騒動の浅香光代、渡部絵美、神田川俊郎というメンバーでの生中継。そしてご意見番に丹波哲郎という、関東だったら絶対生でやろうとは思わないでしょうね。これは地域性なんでしょうが、面白いことなら少々角が立ってもやってしまうというのは、非常にテレビ向きの考えです。視聴者は常にハプニングを求めていて、あざとい東京の作り手はやらせの十分はいった録画でハプニングを演出したりしているのですが、生のハプニングは質が違います。浅香光代さんが神田川さんの髪の毛を引っ張って、『神田川かつら疑惑』に一応の決着を付けたのは(^^;)、生だったから説得力があったのです(たとえ、番組台本に髪の毛を引っ張ることが予定として書き込まれていてもね(^^))。
あと、こうした番組を成り立たせているのは、どちらにも角が立たず、険悪な雰囲気も笑いで乗り切ってしまうような司会者の存在です。渡辺徹さんというのはオールマイティな人で、上品なものも下品なものも、自分の中に取り込んで、笑いで切り返してしまう才能を持った人です。俳優としての経験というより、普通の人ではとてもつとまらないNHKのラジオバラエティで安定した人気を保っていることからも、彼の資質というのは伺えます。0点か100点かというよりも、常に80点を取れる人というのはテレビ向きなのですね。更にそういう人にはある種の毒を薄める効用もあります。今回は他にも大西結花、そのまんま東と旬の毒のあるタレントも出ていましたからなおさらでしょうね。
- 真似して真似され二人旅(99.8.9〜10・NHKBS2)
今年の2月に放送された番組の続編です。前回は二つの旅を一つの放送に押し込んでしまって、その部分が物足りないなと思っていたところ、二日に分けての放送ということになりました。何か私の意見が通ったようで嬉しくもあります(^^)。
まず、9日放送分はタレントの関根勤さんと俳優の大滝秀治さんという組み合わせ。旅に出た先が、静岡県の沼津港から西伊豆の戸田、土肥温泉という私にとっての地元ということで、その点も興味深く見られました。前回、元阪神タイガースの掛布さんと同行した松村さんのように、関根さんは自分が好きでないと決して物まねをやらないと告白していました。つまり、笑いものにする芸ではないということですね。何かとっても暖かい、ほのぼのした雰囲気で旅が進行していきます。
関根さんが旅のパートナーとして大滝さんを選んだのには、その顔というか骨格というかが全くそっくりで、すでに他界されてしまったという関根さんの父親を思い出すということも理由だったらしいです。番組では大滝さんの若い頃の写真も出てきましたが、これがまた関根さんそっくりなんですね。番組では大滝さんに刑事をテーマにしたコントを強制したり、大滝流こだわりというのを紹介したり、特に関根さんの想いが強く伝わってきます。ただ、いくら物まねする方に思い入れがあっても、物まねされる方が拒絶したらそれまでです。その点今回の大滝さんは、マイペースな行動が目に付くような演出をされていたものの、饒舌に語っているように感じられました。大滝さんは74歳とか。私も、関根さんと同じように大滝さんは『特捜最前線』という刑事ドラマで藤岡弘・誠直也・夏夕介という往年の変身ヒーローを従えて(^^;)出ておられた頃から見てました。今後も、もっと色々な場所でその演技を見たい俳優さんであります。
続いて登場したのは島倉千代子さんとコロッケさん。少女時代から唄っていて、デビューが高校2年生だという島倉さんは修学旅行に行ったことがないそうで、奈良周辺の名所旧跡の旅を選択します。テレビカメラの前ではかわいらしさを演出する島倉千代子さんですが、離婚・多額の借金・身内の不幸と様々な人生の辛酸を味わってきた島倉さんだけに、ああした姿を見ると痛々しくもあります。美空ひばりさんと連名で出したレコードを聴きながら涙を流したのは、演出はあったにしてもこの番組のコンセプトの勝利という感じがしましたね。そんなことよりも、どうしてNHKはコロッケさんの物真似を画面で紹介するとき、わざとつまらないのばかり紹介するのでしょう(^^;)。衛星放送だけでなく、地上波でも放送することを考えて、局内倫理に照らし合わせてだめなのをカットしたとしか考えられないのですが。そう言う論法からすると、清水アキラさんの下ネタ満載の爆笑物真似のネタにされた人との二人旅なんていう企画自体が成り立たないのでしょうか。あくまでそれがメインでない場合は、おもしろさ優先でソフトを選んで欲しいです(^^)。
- 海外ドキュメンタリー『西暦2000年の正体』(99.8.6・NHK教育)
イギリスのチャンネル4制作のドキュメンタリー。ノストラダムスの予言が1999年の7の月ということで、何も起こらずほっとした人も多かったのではないでしょうか。しかし、2000年を数える基準になったものは何かということを知らない人が多すぎます。かくいう私がそうだったのですが(^^;)。
以前はローマ皇帝の治世から数えられていた年号を、キリスト生誕の年から数えることにしようと言い出したのはとある修道士でした。まあ、一つの国の皇帝に依った年号なら、世界的に使われることはなかったでしょう。当時決めた紀元1年とは、キリストが誕生した年に決めたことで、ローマ帝国だけでなく、当時のキリスト教を信仰するヨーロッパ諸国にとっても都合のいいものでした。ただ、ちょっとけちも付けてしまいましょう。キリストが生まれた年だと言うことだと私たちの常識からするとちょっとおかしいのです。だって生まれたての赤ん坊の年齢は1歳じゃないですよね。これは当時のヨーロッパに『0』(ゼロ)という概念が存在しなかったからで、ここでもしイスラム文化圏のゼロの概念を持った人が先に世間に認められるような暦を出していたらと思ってしまうのです。また、当時の人がキリストが生まれた年を算定したのは間違っているのではという指摘も存在します。正確には紀元前4年だという話もあれば、紀元前12年という話もあります。とにかく、紀元の始まりがキリストの生誕と正確に結びつかないことは確かで、キリスト誕生から2000年で復活するなんて言っている人には、その確かな根拠を聞いてみたい気がします。あと面白かったのは、現在使われているグレゴリオ暦というものは16世紀から使用され、当時一番正確であったがために現在まで主流として使われているという事実(つまり、紀元前まで含め2000年を数えるときの基準がその時になって初めてできたと言うこと)。月の満ち欠けを基準にした太陰暦ではそのままにしておくと季節がずれ、太陽暦としてその後の主流となったユリウス暦も閏年については考えていなかったので、更に修正を加えたとのこと。ということは999年から1000年の時は違う基準で数を数えていたと言うことなんですね。何かそんな事実を知らされると笑うしかありません。
しかし、基準となってしまったものはしょうがないのであって、俗に言うコンピュータの2000年問題は存在します。問題はそういうことをすぐに終末論に結びつけて人々の恐怖をあおる人たちです。自分たちだけで盛り上がっているのには水を差すつもりはありませんので、そこのところは誤解なきように(^^;)。
- ハイビジョン中継日本の祭り『青森ねぷた』(99.8.5・NHKBS2)
本当は生中継はハイビジョンチャンネルでやっていたらしいのですが、衛星では時間差があったので最後まで見ていたら夜中になってしまいました。青森には一度ねぶた祭りの時期に訪れたことがあります。青森市内の友人宅を訪ね、市内のホームセンターらしきところでハネト(ねぶたの山車について踊りを踊る人たちのこと)が着用する衣装一式を購入、着付けは友人の母親にしてもらい、単なる観光客に過ぎなかった私はいけしゃあしゃあと地元民のようななりをして祭りに参加してしまったのでした(^^;)。
ですから、その時は周りの雰囲気のままはねている事しか記憶になく、勇壮なねぶたの山車をしっかり見ていなかったのです。確かに実際とテレビは違うのですが、テレビ桟敷というのはスポーツ中継と同じで特等席でとにかく見ることができるんですから便利になったものです。
今回、画期的だと思ったのは、あのねぶたはものすごい制作費が掛かるものだけに大企業がスポンサーになっているのですが、そのスポンサー名を堂々と映していたことでしょうか(^^;)。基本的に生中継なので、モザイクをかけるとかできないこともあるのでしょうが、あれだけの企業名を連続して映したのはNHK史上まれにみるものかも知れません。今後同じように臨場感あふれる中継をしようと思えば、NHKにとっては放送したくない部分というものもたくさん出てきてしまうことが考えられます。しかし、企業の協力がなければ祭り自体が存在し得ないわけでそうしたすべてを中継することが祭りの魅力を直に伝える事になっていくわけで。また、大きいねぶたの中に入った小さいねぶたが沢山あったのですが、その中で『おじゃる丸』というNHKで放送しているアニメのキャラクターや、今回放送があったBS放送のマスコットが行列の中にいたのを目ざとく画面に映していたのはちょっとフェアじゃないなとも深読みしてしまいました(^^;)。
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