98年10月
- 笑っていいとも!(フジテレビ・10.23)
以前タモリ倶楽部を紹介したときに書いたとおり、タモリさんの芸風は好きなのであんまり悪く言いたくないのですが、今日は一言言わせていただきましょう(^^)。アツアツのカップルをステージにあげて、そのアツアツぶりを出演者が判定するという企画があって、たぶん全く来なかったか、全然テレビに出せない人だけしか来なかったか。そんなわけで全くの内輪の、番組担当ディレクター夫妻が登場してきました。全くの職場結婚らしく、仕事熱心の現れかなんて思いながら見ていたのですが、別に見ているこちらとしてはどうでもいいことを『○○事件』なんて大げさに言ってみたり、お二人が裸で抱き合っている写真(もちろん下半分は隠れてますが(^^;))を見せたり。極めつけは、出演者全員がこのカップルをアツアツと認め、賞金10万円を受け取ってしまったこと(^^;)。まるで、自分でギャンブルを主催して自分で賞金を持っていってしまったようなものです。
テレビというものは見たそばから消えていってしまうから、こんな事に異議を唱えたとしてもしようがないのかもしれませんが、彼らがやっていることは、給料の二重取りです。フジテレビというのは、どうも、身内に対して甘いですねえ。こんな事を見せられていては、見ているこちらとしては白けるばかりです。体当たりの番組づくりで視聴率競争に勝利した日本テレビとの差は、こんなところにあるのでしょうか。
- 未来潮流 サッカーに学ぶ日本的システムの未来(NHK教育・10.17)
あの大騒ぎしたフランスでのサッカーワールドカップからもう四ヶ月も過ぎてしまったのですね。Jリーグが再開され、新しい日本代表の概要が発表されましたが、あのお祭り騒ぎはどこへ行ったのでしょう。ここら辺はいかにも日本人的だと思うのですが、お祭り騒ぎが好きで、その過程のつらく苦しいところにはあんまり目を向ける人がいない(^^;)。しかし、何事も表があれば裏がある。そうした裏の部分を見ないで、楽しいことばかりを享受しようとする。プロ野球のペナントレースで、38年ぶりに横浜ベイスターズが優勝したのを見て、「実は私は根っからの横浜ファンで」などと言い出す人にも似ていますね(^^;)。
番組の中で興味深かったことは、単なるスポーツであるサッカーに、世界をとりまとめて行く力があると指摘をしていたことです。例えば、どこかの国へ行って、土地の人と友だちになりたいと思った場合、サッカーのボールを持っていってどこかの公園に行ってみたらどうか。もし、仲間に入れてくれたとしたら、はっきり言って言語でのコミュニケーションは不必要になります。プロリーグの試合を見に、スタジアムに行った場合、そこには多国籍の人間で構成されたチームがあるだけで、民族がどうだということは今後は問題にならなくなってくるでしょう。つまり、今までの相互理解に必要な手段というものを飛び越えて、いきなり仲良くなれてしまう魅力というものをサッカーというゲームは内包しているわけですね。
2002年に開催されるサッカーのワールドカップ。個人的には日本が勝った負けたなんて小さいことにこだわるよりも、ホスト国としてどれだけ国際社会の中に溶け込めるか、そのためにはどんなことを心がければいいのか、サッカーくじで議論するよりも、地道にやることがいっぱいあるような気がしますよね(^^)。
- 驚きももの木20世紀『船村徹と別れの一本杉』(朝日放送・10.16)
現在の日本の音楽状況というのは、ポップス系が中心で演歌は見る影もなく(^^;)。演歌の世界というのは独特で、各レコード会社専属の作詞家作曲家の先生につき、専属の歌手が修行するんですね。そんな世界に反発するかのように自分で詩と曲を作り演奏する人たちが現れ、その反動として演歌が大衆性を失っていったのです。しかし、こう自作自演の曲が氾濫するに付け、昔ながらの曲作りというのも捨てたものではないと私などは思うんですがね。演歌という枠を飛び越えて、実は好きなのが船村徹さんの曲です(^^)。春日八郎『別れの一本杉』は、友人であり作詞家の高野公男さんとの思い出が詰まった曲という話を初めて聞きました。当時死の病の床にあった高野氏に、生きているうちに成功した気持ちを味わってもらおうと、氏の故郷である水戸で、レコード会社の専属歌手を集結させるコンサートを開くことを条件にレコード会社を決めたという(^^)。しかし、死んだ後にああ残念だと大がかりにイベントを開くよりも、ずっと本人のためになることで、そんなことを一瞬に判断してやってしまう船村さんはすごい人だと改めて思います。そうして決めたコロムビアに入ったからこそ、美空ひばり『哀愁波止場』が生まれたのですね。
- ドラマスペシャル 七人の刑事(TBS・10.12)
足腰も言うことを利かなくなった、二十年前の名刑事たちが何を伊豆の温泉旅館までやって来てやるかと思ったら、徹底的な弁護士批判でした(^^;)。背景には昨今の事件にあるように、未成年犯罪や、精神障害と認定された加害者の人権が保護され、被害者が浮かばれないという庶民の苛立ちがあるんですよね。もちろん、今後は被害者の人権にも十分な配慮がなされるべきでしょうが、どちらにしても疑わしきは罰してはいけないし、精神を病んでいるとして強制的に逮捕とか入院とかさせるようなことはあってはいけない。また、どんな凶悪犯でも弁護を受ける権利はある。オウムが悪いんだから、裁判なんかせずにすぐに教祖を死刑にしろっていうんでしょうか。そんなことをやらなくなったのが、現代の民主主義社会のはずなのに。やはり、二十年前の亡霊は再び姿を現すべきではなかった。多くの弁護士の皆さんは、このドラマをどんな風に見たのでしょうか。
- 全国社会人野球大会決勝(NHK教育・10.11)
決勝のカードは日本生命とNTT関東なのだが、見ていて腹が立ってきた。なぜなら、応援が最悪だからだ。高校野球でも大学でも、はたまたプロ野球でも、応援は肉声が基本のはずだ。しかし、あの日本生命の応援は何だ。おそらく拡声器を使って出てくる、男や女のリーダーらしき人たちの金切り声を聞かされなければならない。特に、声の高い女が最悪。ブラスバンドや鳴り物の音というのは、テレビでは気にならなかったのだが、この声だけはいけない。男の声もパチンコ屋の呼び込みに聞こえてきたぞ(^^;)。こんな応援を背に受けて、福留くんもよく腐らないものだ。一番すごいのはプロに行かず社会人野球に骨を埋める決心をした社会人野球のエース、杉浦投手か。逆に応援の騒々しさに慣れているからいいのかもしれない。相手のチームにとっては気にしだしたらたまらないから、ひょっとすると究極の応援方法かもしれぬ。それにしてもなあ。大会本部からどうして注意されないの。
結果は、シーソーゲームの末、NTT関東が逆転サヨナラ勝ちで初優勝。見ているこちらとしては、大いに溜飲を下げたのでした。
- ようこそ先輩 課外授業(NHK総合・10.8)
各界で活躍する才能を持った人々が、自分の故郷に行って小学校の後輩に課外授業をするというのがこの番組である。今回の出演は映像作家の岩井俊雄氏。小学生にもわかるような授業だけに、見ているこちらとしても非常にわかりやすい。
岩井氏が最初に持ち出したのは、教科書の隅のページに書いたパラパラ漫画だった。ページをパラパラめくっていくと、絵が動くというあれである。そうしたことから、岩井氏は生徒らにアニメを作ることを要求する。アニメと聞くと難しそうだが、小学生に作らせるのだからそうではない。画用紙と、赤と青のマーカーを用意し、赤で最初に絵を描き、それが動いた結果の絵を青で上書きする。それから、赤と青のセロファンをつなげたものを用意する。セロファンを目の前で交互にずらすことによって、赤で書かれた部分と青で書かれた部分が動いて見えるというわけだ。単純な二コマのアニメーションなのだが、これは、よーく考えたら、これと同じ仕組みのものを私たちは身近に使っているのではないかと思った。勘のいい人ならもうおわかりでしょう。例のGIFアニメというやつです。
そう言う風に、簡単に小学生がアニメを作っているのを見ると、何かこちらとしても負けてはいられないなという感じにもなってくる。だいたいテレビを見ている時間というのは、後から考えると無駄な時間だなと思うことが多いのだが、今回は時間の無駄どころか大いに役に立ったのだった。いつかはこのホームページにも自作のアニメをつけてみたいですね(^^;)。
- ドラマスペシャル「烏鯉」(TBS系・10.5)
松本幸四郎と西田敏行が共演した異色と銘打たれたドラマ。松たか子との親子共演というのはドラマに話題性を持たせるための蛇足という感じがしないでもない。内容は予測できるものの、役者の個性で魅せる。キャスティングの妙ということだと、脚本の良さはともかく、プロデューサーの力量と言うこともあるのかも知れない。プロデューサーの八木康夫さんは、もはや伝説のロックバンドとなってしまったJAGATARAのアルバムでライナーノーツを書いていた人だ。ボーカルの江戸アケミ氏が壮絶な死に方をした後、多くのことを私に考えさせてくれた。このドラマでも西田が演ずる小浜という男が没した後、私たちに何かを考えて欲しいと思ったに違いない。人生まだまだ、おもしろく生きましょう。そんなメッセージがジワリと伝わってきた。
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