これがNHKの面白く見せようとするつまらなさなんだろうね(^^;)。センセーショナルな題名を付けて、興味の薄い人たちまで呼び込もうとするために、途中に工夫の跡の見えるドラマ仕立ての挿入部分が入っているんですけど、それだけの時間があるんだったらもっと見ている人たちに考えさせる時間をもうけてほしかったですね。
知らない人のために簡単に説明しておくと、「ボヘミアン・ラプソディ」とはUKのロックバンドQueenの曲。フルコーラス6分もあり、曲調もクルクル変わり、オペラチックな部分もある大変難解そうな曲であるにもかかわらず、1975年のクリスマスからUKのヒットチャートで9週連続1位を記録したという驚異的大ヒットを記録したのです。その後、1999年に過去千年(^^;)の曲の中のリクエストを取ったところ、なんとビートルズや他の有名曲を抑えてこれも1位になったとのこと。日本では熱狂的なファンがいる反面、「ボヘミアン・ラプソディ」という曲にそれほどの認知度はない。で、なぜ? というコンセプトの番組だったのでした。
制作者サイドとしては、この曲が発売された1975年という年を、UK全体に閉塞感が充満していたととらえ、「ボヘミアン・ラプソディ」はファンタジーを国民に提供し、熱中させることに成功したと指摘しています。これ以前の状況は2002年現在の日本の状況と非常に似ているとも。しかし、制作者はじゃあ日本はどうすればいいのと言う答えを持っていないのですね。あくまで歌詞の謎解きに終始し、ドラマ仕立ての戯言を繰り返すばかり。というわけで、ちょっと触発されたのでここで大いに語ってみましょうとキーボードを叩いてみました(^^;)。
今の日本の状況というのはUKと比べること自体おこがましい状況だとまず思うのですよ。議会制民主主義の体制は、日本が徳川幕府の時代から整っていたという事実があり、今日本で起こっているような国会議員と政府官僚の癒着とか言う話は、それこそ何百年も前に本国では議論されてきたのであります。理論的にはわかっていても、実際に問題に着手し、それを克服するためには数多くの経験が必要です。今の日本はその経験をするチャンスだと思うのですが、下手をすると変な方向に行ってしまう危険性も併せ持っているのです。
現在のヨーロッパ各国では労働者の失業が増える共に、極右勢力が台頭してきています。民族の誇りや自信を失った人たちはどこによりどころを求めるかというと、簡単なのが過去の栄光なのですね(^^;)。昔は自分たちが一番だったのに、いつの間にかいろんなところから出稼ぎ労働者が来て、企業もいつの間にか外国企業に占有され、自分たちの居場所がなくなった。だからそういうものは力で排除せよとなる。ロシアでは今、ヒトラーを崇拝する若い人が多いんだそうです。哀しいことに彼らは、優れたロシア文化を自分たち民族の誇りと思うことはできなかったと言うことですね。
そういう観点からすると、Queenという王室の名を持ったロックグループが、これだけの壮大な音楽絵巻を創出してくれたということは、まさしくUKの人たちにとっては溜飲が下がる思いだったことでしょう。UKの社会は、流行ものであるロックにおいても様々な歴史や文化を融合させることが出来、それを聴衆も感じ取ることができたきわめて希有な例だと言えるでしょう。
振り返って日本の状況を考えてみるに、日本人のアイデンティティを形として表すなんてことを考えると、どうしても右翼の方向に行ってしまう現状があります(^^;)。はっきり言って今の日本のミュージシャンにそういうことを期待してもしょうがないでしょうね。だとしたら、私たちはむしろ国としてのアイデンティティを求めるのではなく、もっと広い範囲で物事を考えた方がいいのではないかという考えにも突き当たります。
Queenというバンド名を聞いて、多くの人が連想するのは「ボヘミアン・ラプソディ」というよりも「We are the campion」(邦名 伝説のチャンピオン)ではないかと思います。「I am」ではなくて「We are」と歌うことで、この曲はUKだけではなく、全ヨーロッパ、いや全世界的な歌となりました。Queenというバンド自体が世界的どさ回りをやったバンドで(^^;)、日本では早くから人気がありましたし、南米でも「ライブ・イン・リオ」のコンサートはものすごい規模でした。ビートルズのようにライブを早々にやめてしまうのではなく、足繁くいろんなところの聴衆に向けて歌う。それが「We are the campion」を世界的に認知させた原因だろうと思います。今度のサッカーのワールドカップでは、優勝した国がどこであれ、この曲を高らかに歌うことでしょう。日本がどうだとか、そういうことでなく、同じ音楽を聴いている同士、声高らかに歌うことで違った人たちが同化されていきます。音楽の持つ力というのを、こんな時代だから、もっと考えてみてもいいのではないか。それにしても日本のミュージシャンは内弁慶で何をやってるんだ(^^;)と、番組を見終えていろいろ考えているうちに思えてきました。
そういう意味からすると、受け取る私たちも内側ばかりでなく、外の世界に目を向けることがこの閉塞状況をうち砕く一つのヒントに成りはしないかと思います。もしかしたら来月開催のサッカーのワールドカップは一つのターニングポイントになり得るのではないかという気もしますが、くれぐれも変な方向に行かないことを祈りたいものです。
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