2001年5月のテレビ
- にんげんドキュメント
「斬られ役・大部屋俳優58歳の心意気」(NHK総合・2001.5.24)
人が死なずに、ロシアの新体操の選手が出てくる時代劇映画。そこまでやらないと若い観客は来ないのでしょうか。そんなことは決してないと私は思います。ハリウッドのアクションを真似しても、それを越えるものは作れない。あくまでも日本独自の殺陣(たて)で勝負するだけのすそ野というのが今の日本映画にはないといってしまえばそれまでですが。
今回の主役、福本清三さんは、東映の専属で大部屋俳優の長老です。どぎついメークに派手な斬られ方。名前は知らなくても必ずみんながどこかで見ている人ではないでしょうか(ちなみにこの名前でインターネット上で検索をかけてみてください。たくさんのファンサイトを見つけられるでしょう)。彼は舞台で見事に死ぬことに命をかけています。ほんの数秒の場面にしか映りませんが、一生懸命やれば必ず評価してくれる人がいるということで苦しい生活にも耐えて役者生活を続けてきた一途さには頭が下がります。
普段の福本さんは実にシャイな人のように画面からは見受けられましたが、こんな特集として取り上げられる魅力というのは何なのか考えると、やはり一瞬の演技に命をかける姿が目に焼き付いている人が多いということなのでしょうか。
東映の専属契約は60歳で切れるそうですが、まだまだ彼の姿を見ていたいですね。そうした彼の心意気をきちんと理解してくれる監督に恵まれて、殺陣のものすごい迫力の映画が出来ないものでしょうか。古くさいから受けないというのは単なる言い訳のようでもありますから。
- 世界・わが心の旅
「キューバ・俺とゲバラで描く銀幕」 長谷川和彦(NHKBS2・2001.5.13)
映画監督の長谷川和彦さんといえば、沢田研二が主演の『太陽を盗んだ男』が思い出されますが、それ以降映画を作っていないという。で、次回作の構想を練るためにキューバを訪れ、チェ・ゲバラの姿を追っていくというのが今回の旅のテーマ。キューバは葉巻の産地で、もし日本で禁煙法というのが実施されたとき、日本とキューバを結んで、ゲバラのような人物と日本人の主人公を結びつけて面白いストーリーをものにしたいという感じらしいのですが。
キューバの今は、アメリカから経済制裁を受け、決して楽ではない暮らしのはずです。しかし、ここに出てくる人たちの表情は概して明るく、革命の英雄ゲバラのことを誇らしげに語るのです。長谷川監督が当時のゲバラの映像を目にするシーンがあって、彼も驚いていたのですが私もびっくりしてしまった強烈なシーンがあります。ゲリラ戦を戦っている戦場のフィルムがあるのですが、そこに武器弾薬を持つのは普通ですが、同時にギターを持って移動しているのでした(^^)。
政治と音楽とは、不釣り合いなものであるような気がしますが、生真面目に政治のことばかり強制したところで人の心はまとめることはできない。よしんばできるとしても、それは暗闇の恐怖政治になるかもしれず、キューバはそうした方向を選ばなかったことで現在があると言えるかもしれません。
こういう番組を見てしまうと、ぜひともキューバに足を踏み入れたくなってしまいます。しかし、お金は借金をすればいいとしても(^^;)、時間がないというのが痛いですね。
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