2000年4月のテレビ
- 中学生日記(NHK総合・2000.4.30)
今回はドラマでなく、出演している名古屋の中学生の恐喝に関する討論でした。例の五千四百万円の恐喝事件は、ひょっとしたら今回画面で発言している中学生のいる中学校で起こった事件かもしれませんが、NHKの討論は事前に綿密な打ち合わせがあって、突拍子なことや衝撃的内容のことは『日曜討論』など政治家の発言を除いてできないようになっているのではないかという感じがします。しかし、そんな中でも興味深い発言が聞かれました。
中学生たちは、いじめや恐喝が起こる温床として、集団の階級化と派閥化というものを挙げていました。難しい言い方ですが、こういうことを中学生が言っているのですから仕方がありません(^^;)。以前映画で井上陽水さんが主題歌を歌った『少年時代』という作品がありました。この作品は第二次世界大戦中の疎開先での少年たちの生の生活を描写したものですが、少年というか人間というものは自分の身を守るため派閥を作り、力の強いものが現れるとすぐにその下につき、従わないものを迫害する。これは少年だけの問題ではありません。階級制度といえば、士農工商の身分制度がそうですし、更にその下の身分を作ることで上に向かっての問題を巧みにそらしてきたという歴史もあります。
ですから、こうした問題は中学生自身の問題でもありますが、同時に私たちも考えなければならないことでもあります。まずは自分が面白くないことがあったとしても、それを自分より力の弱いものに向けてうっぷんを晴らしたりしないこと。自分でまいた種は自分で刈り取ることから始めてみようと私は思います。
- 映画『ピカソ−天才の秘密』(NHKBS2・2000.4.20)
これは映画というよりドキュメンタリーフィルムですね。途中から見たりした人は何がなんだかわからないでしょうが、実際にピカソが書いているところを写し絵用のキャンバスの向こうからカメラを回しているので、ピカソの制作課程がつぶさに伝わるというわけ。色まで付けて五分で描いてしまうのにもびっくりしましたが、なんといっても圧巻だったのは油絵の制作課程を記録したところでしょう。
下絵から色を塗り、見事な出来栄えに完成かと思いきや、例のキュビズムというのでしょうか、折角描いたものを見る人からみれば無残に崩しまくってしまうのです。私たちがよく見る、形が崩された作品群もしっかりした下地があることが映像で確認できます。最後に描いた作品は、本人が苦笑いするほど完成しかけたと思えたものからボロボロに崩れまくり、ピカソはその描きかけを捨てて新たな紙に作品を完成させたのでした。そのあまりの奥の深さには驚くばかりでした。ほんと、一時でもあんな絵なら自分だって描けると思ったことを恥じなければいけませんね(^^;)。
- 痛快! 買い物ランド(2000.4.15)
早い話が、例のテレビショッピングの番組です(^^)。今回の登場は山田邦子と梅宮辰夫。別にあの大げさなお客さんのリアクションは今更始まったものではありませんけど、ウソを流してはだめよ(^^;)。こうした実演販売につきものの、これだけよく落ちますと言う洗剤の販売。アメリカからやってきた社長とともにデモをしていた商品名『クイック&ブライト』実はこれ、真に受けてしまって買ってしまったんですよ(^^;)。ただ、テレビショッピングから抱き合わせ販売の大量セットではなくて、近所のホームセンターで売っていたので試しに購入したのですが。
結論から言いますと、あの洗剤は落ちません(^^;)。家庭の汚れも車も全然落ちないんだから腹が立ちます。しかし、一つ二千円くらいだったのでまあ、騙され賃だと思ってあきらめましたが。家庭の汚れはお酢を薄めたものや、重曹などでたいがいの汚れは落ちるということを後になって聞きました。これらの素材は訳の分からない成分が入っているわけではないので、安心だしお金もほとんどかからないし、駄目でも本来の目的で使用すればいいし(^^;)、いいことづくめです。しかし、ああした番組は番組自体がコマーシャルのような作りであるために、それを批判したところでしょうがないのですね。ただ、その場の雰囲気に流されずに、すぐに電話をすることは愚かなことであることだと覚えておきましょう。他の商品では男女ペアの腕時計が2セット(つまり合計で4本ということになる)で一万円というのがありましたが、一体どんな時計なんでしょうね(^^;)。
- 映画『次郎長意外伝 大暴れ次郎長一家』(NHKBS2・2000.4.13)
映画の題名だけ見ると真面目なもののようですが、主演が三木のり平のアチャラカ時代劇なのです。三木のり平さんとは誰かご存じない方のために説明しておきますと、例の桃屋のコマーシャルにアニメ出演している方です(^^)。現在放映中のものでは、那須与一の舟に何か訳のわからない赤いパンタロンをはいた女性が出てきたり、ああいう感覚を想像していただければいいと思うのですが。次郎長の物語をバラバラに崩して、今のバラエティー番組のようなどぎつい笑いではありませんが、十分見る人を楽しませてくれます。
次郎長の役は小堀明男、森の石松には森繁久弥など、次郎長一家の配役は同じ次郎長ものでもマキノ雅弘監督の『次郎長三国志』とダブるのですが、そんな中で喜劇を演じるほうも演じるほうだし、受けるのも受けるほうだし、今だったら人気ドラマのパロディー版を同じ配役でやってしまうようなもので、よくこんなことやるよなあという感じです。
それにしても、由利徹、八波むと志、南利明の脱線トリオが出てきたり映画というものは偉大だなあと改めて思います。おそらくのり平さんも脱線トリオも、舞台やテレビの面白さの半分も出ていないでしょうが、わずかながらでも追体験が可能なのですから。
放送時間が夕方四時半ということで、なかなかリアルタイムで見られないのが残念ですが、最近のバラエティはうるさすぎてヤダという方は明日も放送されますので、一度ご覧になっても損はないかも。しみじみ思いますが、ビデオというのは偉大ですね。
- プロジェクトX『青函トンネル』(NHK総合・2000.4.11)
今回の春の番組改編の中で、10時からのニュースは評判悪いし、評価の高かった『クローズアップ現代』の放送時間が7時半からに放送時間が変更になったりと、散々な評判のNHKですが、この番組は初回の評判が良かったので今回見させていただきました。前回は富士山レーダー、今回はそれより凄い規模の一大プロジェクト、青函トンネルを作った男たちの物語でした。
トンネルの難工事といえば、私の住んでいるところだと函南と熱海を結ぶ丹那トンネルを思い出しますが、それなど吹き飛んでしまうような難工事だったといいます。19年もかかって本州と北海道をつないだというのですから、まさに気の遠くなるような仕事です。しかし、今回の有珠山の噴火が起こった時トンネルの存在がなかったら、北海道内の物流は今以上に混乱していたはず。現在でも赤字がかさむトンネルであることには違いありませんが、今後も存続することを願います。一連の危機を前にした男たちの思い出話を聞いていると、トンネルの最前線はまさに敵の真っ只中で、常に死を覚悟している戦場であると実感しました。ほとんどの人たちはこういういつ死んでもおかしくない状況で働くことはないでしょうが、そうした状況の中で、一体私だったらトンネルの中に留まれるだろうかと考えてみたりします。
このシリーズでは、もう終わってしまいましたがNHK版の驚きももの木20世紀(ABC制作)という感じもしなくもありません。今後、どのようなプロジェクトを取り上げていくのか、またどんなゲストを呼ぶのかによって面白くなくなったりするので注意が必要です(^^;)。個人的にはタレントのゲストは呼ばないでじっくりと見せてほしいのですが。
- NHKスペシャル『政権交代・台湾総統選挙を追う』(NHK総合・2000.4.2)
つい先日、台湾の総統選挙が終わったわけですが、日本での受け止め方はどうなんでしょうか。パソコンを使っている人にとっては、というか家電製品とかすでに台湾は世界の市場を席巻していますから、台湾に有事あれば少なからず影響が出るでしょう。今回の番組はそうした側面からの分析ではなく、一体台湾に住んでいる人はどのような思惑で投票し、その結果どういう考えを持つ候補者が当選したか、わかりやすく紹介していました。
で、いきなり個人的なことに話が飛びます。その昔、万国博覧会のころですから、まだ日本と中国の国交が正常化していない頃、ペプシコーラの王冠の裏をめくると世界各国の国旗と国名が現れるという企画がありました。その当時は中国というと北京を首都とする中華人民共和国ではなく、台湾に本拠地を置く国民党政府、中華民国だったことを覚えています。なにしろ小さい頃の話でしたから(^^;)、刷り込み効果満点だったようですね。しかし、その辺の詳しいことはわからないので、どうして急に国名が変わってしまったのだろうなんてのんきに構えていたのです。その後、中国本土で起こった、文化大革命などは何が革命なの全くわからず(^^;)、学校でもそのことを教わった覚えがありません。
結局そのへんのことは自分でカバーしてきたわけですが、それだけに今後の台湾の情勢には目が離せません。やみくもに中国が台湾を攻撃することはないでしょうが、もし台湾の独立宣言が出たらどうなるか。もしかしたら中国は世界から孤立することも覚悟の上で、台湾を攻めるかもしれません。パソコンのメモリーの心配なんて小さい小さい(^^;)。厚い本をじっくり読むのは無理でも、一時間弱テレビの前に座っていればそれなりの情報が手に入る、こういう番組を選んで見られれば本当にいいんですが(^^;)。
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