2000年3月のテレビ
- 3年B組金八先生(TBS・2000.3.30)
現代のおとぎ話がようやく大団円を迎えましたね。性善説に基づいて人間関係を単純に捕らえています。こうあったらいいなという思いこみによって。
このシリーズでは高齢者との関係とか、いじめの問題とか、家庭崩壊や引きこもりといった報道を通じて表面化してきた問題を取り上げたのが特徴でした。しかし、教師自体が抱える問題は結局棚上げしたままのような感じも。というか、これだけでも盛り込みすぎなんですよね。つまりは教育の問題から離れて、一個のエンターテイメントとして見るべきものだということ。実際にこんな学校も、こんな生徒も先生も存在しないんだし、それは見ている人たちにはわかり切っていることだと思うし。
しかし、最後の場面なんかは以前のバージョンと全く変わらないですね(^^;)。そういう意味では、昔の中学生も今の中学生もそう変わっていないのかなあ。
さてさて、最後にみんなで踊ったソーラン節。まさに荒れた学校を救う象徴になっておりますね。伊藤多喜雄さんの歌は個人的に好きでしたが、最後にはこれで丸く治まるというのも納得が行かないなと(^^;)、へそ曲がりな私は更に思ってしまったのでした。
- 食は文学にあり『檀一雄と坂口安吾』(NHKBS2・2000.3.15)
やはりこの番組は見なくてはいけないでしょうということで見ました(^^)。檀さんのご子息はテレビではたびたび拝見しているのですが、坂口綱男さんはテレビでは始めて拝見しました。浅草のお好み焼き屋『染太郎』で、安吾が手をついたという鉄板の写真を撮っておられましたが、肝心のものを食べる場面は檀太郎さんと嵐山光三郎さんが中心で、ちょっと残念な部分もありました。
番組では安吾の贅を尽くした鍋が紹介されていましたが、確かに貧乏でも金が入ればあるだけ使ってみんなに振る舞うというすさまじい鍋でした。大鍋に日本酒を一升ビン丸ごと入れて、大根と鶏肉で出しをとって、魚と肉は新鮮な材料をそろえて豪快に食するというのはすごい。また、雑炊の最後の仕上げにチーズを大量に入れて煮込むというのはちょっとやってみたいなという気も。
それにしても、単に腹を満たすだけでなくて、大勢とわいわいやりながら最高の食材を食すということはできそうでいてなかなかできないことです。番組ではしばし狂気的に語られる『ライスカレー百人前出前事件』などが語られていましたが、単なる狂気の人だったら鍋をやった時にたくさんの人は集まらないでしょうし、多分に魅力を持った人だったようですね。
しかし、現代に安吾が現れたとしたら、格好のワイドショーネタになり、一般の良識から悪だと語られるのでしょうね。確かに恐い人という感じはしますが、いちど大鍋大会にお呼ばれしたいような(^^)。
- 映画『モンティパイソン・ライブ・アット・ハリウッド・ボウル』(NHKBS2・2000.3.11)
中途半端な時間に起きてしまったので、真夜中に洗練されたコントライブを映像化したものを見ていました(^^;)。ライブなので観客の反応にとまどうこともありましたが、日本とは明らかに違う笑いへの追求の仕方がいいですね。さすがにそれなりに知識がないと面白さがわからない部分もあって、マルクス、ゲバラ、毛沢東などを茶化したり、ギリシャとドイツの哲学者が出場するサッカーの試合などよくこんなことをするなと思えるネタがたくさん。
してみると、その国の歴史というものがコントにも影響するということなのでしょうね。多分日本で同じことをやってもそれほど受けないでしょうし、形式だけをパクリながらその実はかなり崩したものでしか表現できなかったのもわかるような気がします。
ライブを映像ソフトとして保存するというのは、このように今になって追体験できるメリットがありますね。逆にいうと、テレビの中で生まれるお笑いは生まれたそばからすぐに消えていってしまうということ。テレビというものはそういうものだとわかっていても、ちょっと切ないですね。
- 海外ドキュメンタリー『人類初の宇宙飛行士は誰?』(NHK教育・2000.3.3)
たとえば、皆さん歴史の教科書にのっている馬に乗っている室町幕府を開いた足利尊氏の肖像、本人じゃないって知ってました? 武将ということですとその前の鎌倉幕府を開いた源頼朝の肖像も本人とは言えないという説があるらしい。歴史というのは実は勝者の歴史であって、都合の悪い部分はねじ曲げられていることも多いのです。それをそのまま学校で習っていることには皆さん気づいているのでしょうか。
さて、この番組人類初の宇宙飛行士・当時ソビエト連邦のガガーリン少佐より前に宇宙に行った人がいるとの説を紹介しています。その人の名は、今も健在なウラジーミル・イリューシン氏。番組によると、ガガーリンより前に宇宙に飛び出しながら、当時ソ連とは関係が悪化していた中国国内に不時着したとの説を紹介しています。つまり、有人宇宙飛行に成功したとしても、その結果ぶざまな姿を敵対国に紹介、これを大々的に報じたら国際的には笑い物になると思ってしまったのではないかと。未だに関係各所はこのことを機密扱いにしているそうで、本人の口からもはっきりとした結論は出ずじまい。しかし、もしかしたらその辺の封印が解かれたら、教科書の記述が変わる可能性もあります。
それにしても、ガガーリンさんは可哀想な人でした。英雄として祭り上げられて、酒に溺れ、最後には不可解な航空機事故で不慮の死を遂げたという。人類初の宇宙飛行士という栄誉と引き換えにしてもいい人生だったかというと、そうは思いたくないですね。イリュージン氏は堅実に人生を送っているとのことですが、捨て駒にされないだけの意思の強さを持たないと、やみくもに有名になろうと考えることはちょっと危険だなあとしみじみ感じてしまったのでした。
- 将棋A級順位決定戦最終局(NHKBS2・2000.3.2)
うちのページで紹介している坂口安吾さんが結構将棋を見るのが好きで、その戦いぶりを興味深い作品に残しているということもあって、ほとんど自分ではやらないながらも、戦いの状況を見つめるのが好きなのです。今日は棋士たちにとっては特別な日で、この日の結果いかんによってはA級というシード落ちの危険があるということで、将棋ファンだけではなく一般的な興味をそそることでもあるし、一日中勝敗の行方がわかるまで生中継しているというわけ。結果は、永世名人になった人としては初めて中原誠氏が陥落するというスリリングな展開に。テレビ的な興味という点でいえば、あのデビ婦人にきつい一言を浴びせられた林葉直子女流棋士の不倫相手としても近年は名を馳せた(^^;)人物。対局終了後のインタビューでは、引退はしないで、来年は再起をはかるとのことでしたが、さすがに今の状態で引退したくはないでしょうね。実力の世界というのは見ていて気持ちがいい反面、残酷な一面もあります。それを生で見せるというのは、テレビの醍醐味であると私は思います。プロ野球がつまらないのは、入れ換え戦がないからではないでしょうか。パリーグはともかく、セリーグでは絶対ありえないことでしょうが。
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