マカロニほうれん荘(1977〜79年・鴨川つばめ)

 

 ギャグマンガ好きの私としては、赤塚不二雄から読み出して、なぜか後から先祖帰りのごとく杉浦茂へ転換した読書歴を持っているのですが、個人的には江口寿史さんの「すすめ!!パイレーツ」よりも鴨川つばめさんのこの漫画の方が好きでした。スピード感とまるでしゃべくり漫才のようなギャグの連発にただただ圧倒されていたかのような感じでしたが、この作者は実に自分の興味あるものを作品の中に登場させる人で、それが最終的に彼を破綻に追い込んだのではないかと思っているのですが。

 マカロニほうれん荘は最終的に終了したものの、編集者の意向からかその続編を書かされる羽目になり、問題作「マカロニ2」が連載されました。最後の頃はリアルタイムで読んでいましたからよく覚えていますが、コマの回りがすかすかで登場人物の描写さえもいい加減で、読み手を楽しませようとする初期の頃のサービス精神はほとんどなくなり、自分の心情(実は私はこんな人間なんだ)という重いテーマでの会話が続きました。

 全盛期の作品の中にちょくちょく出てくるのは、旧日本軍とか、街頭宣伝をする右翼とかに共通する美意識に基づいた実に凝った描写でした。そういうものはほとんど物語の進行とは関係なく、唐突に出てくるので別段気にすることなく多くの人たちは読んでいってしまったのだと思います。もともとマカロニほうれん荘は学園恋愛ものであり、そうした日常の中に非日常であるきんどーさんやトシちゃんが入り込んでくることによってギャグのエッセンスが生まれてきます。ある意味本筋からも、作者の描きたいものからも離れたものであるギャグに世間は拍手喝采する。まあそんな風に書くと都合のいいように書いてと言われるかもしれませんが、あれだけ質の高いギャグを書き続けることはかなりのエネルギーを消費したと思いますね。結局はそれが作者をして作品の終焉に向かわせたという事なのだと思います。

 今読み直してみると、面白い部分もあり古くなってしまった部分もあります。おそらく今の小中学生にとっては面白くない漫画なのかも知れません。でも、今もなおこんな文章を書きたくなるほど、印象に残る漫画であったと断言できます。たった2年間しか連載していないにもかかわらず、これだけのインパクトを未だ残しているこの漫画は、版元の秋田書店から未だにコミックスが発売されているというのも嬉しいですね。


 

 

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