ハムスターの研究レポート(大雪師走・1988年〜)

 

 本当は年代順にやっていこうかとも思ったのですが、きちっとやろうとするとだんだん追い込まれてくるので、前回の蛸の八ちゃんから動物つながりということで『ハムスターの研究レポート』を取り上げます。相変わらずキャラクターの掲載はできませんが、単行本は偕成社から5巻まで出ていますし、現在これだけのブームになっているのですから簡単に見つけられると思います。

 今、ハムスターがブームと書きましたが、このマンガがあったからハムスターを飼い始めたという人も結構多いのではと思うわけです。連載開始から12年で単行本が5巻だけということからもわかる通り、作者はこのマンガについては寡作です。というか、題名の通りハムスターを観察してその様子でネタになるものを選んだ上で作品にしているのですから、そうそう量産はできないわけですね。週間マンガ雑誌が量産され、物凄い量を書いていく中から傑作を生みだしてきたかつての少年マンガの世界からすると希有なことに思われるかもしれませんが、マンガの成り立ちの性質上、しょうがないのであります。

 作者が描くハムスターの表情は喜怒哀楽がなく、漫画のキャラクターらしくありません。しかし、実際に怒ったり笑ったりさせたとしたら、ハムスターを擬人化することになり、とたんにつまらなくなってしまうでしょう。他のマンガの中には擬人化を行ってかわいさを引き立て、キャラクター商品を売っているものもありますが、そういうものこそブームの中でしか生き残れないものであり、普遍性を持ちえません。普段私たちが目にするハムスターをできるだけ忠実に表現するからこそ、いつ読んでも新鮮な面白さが生まれます。それはなにも、ハムスターに関することだけではありません。

 このマンガの特徴的なことは、作者が力を抜いて自分の周りの現象にちょっと味付けを加えただけで私たちの前に出してくれることにあります。作者は名古屋出身だそうですが、そこには名古屋の人にしかわからないものも出てきます。お菓子の『マコロン』だとか、スーパーの『ナフコ』だとか、ちょっとしたことのようですが、別にそれが全国区のお菓子でありコンビニであってもいいはずなのです。敢えて自分の出身を隠さずに家庭の中を描き出すことによって、読んでいる私たちも安心して作者の世界の中に浸りきることができます。で、ハムスターを飼うとどんなことがあるかも知らず知らずのうちに学習できるということになるわけです。

 言うまでもないことかもしれませんが、ペットを飼うということはいいことばかりではありません。せっせと世話をしていても突然死んでしまうこともあるでしょうし、脱走してどこかへ逃げてしまうこともあるでしょう。作者はそうした嫌なことも含めて、ネタとして笑い飛ばしています。まさに、研究レポートとしての面目躍如といったところです。

 あと一つ、このマンガの中の『笑い』ということについて考えてみます。私たちは普段どういうことで笑っているでしょうか。テレビのバラエティでは笑わせるというよりも笑われる役割を担った人を見て笑っていたり、露骨な下ネタで笑ったりしています。むろん、そうした笑いそのものを否定する気はありませんが、人を莫迦にしなくても、下ネタに走らなくてもこれだけ笑いを取れるのだという見本としてのこの作品の評価はもっとされていいのではないでしょうか。ハムスターの生態を扱ったものだけに、今後の展開でマンネリズムに陥る危険を常に背負っているマンガなのですが、寡作でいいですからぜひとも作者にはライフワークとして続けて行って欲しいです。(2000.10.10)


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