2006新茶を楽しむ

 

藤枝・向島園の茶畑

 

 毎年、春のご挨拶をかねて新茶を各方面に送っているのですが、今年はちょっと違ったものをということでいろいろ調べていました。お茶という農作物というのは、単に収穫したものをそのままというわけではなく、加工するという行程が入ります。そこで、できる限り生産者の顔が見えるものをということでアンテナをはっていたら、今回お邪魔することになった藤枝市の向島園さんを見付けました。ここでは敷地内に製茶工場を持ち、無農薬・化学肥料なしで育てたお茶を直接販売しています。有機栽培の特性を生かすため、お茶を粉にしてそのまま飲める粉末緑茶もラインナップされているので、今回は粉末緑茶を中心に購入してきました。農園の様子ともども紹介します。


向島園の茶の木 普通のお茶の木

 お宅の裏が茶畑になっていて、中を案内してもらいました。まず驚くのが、お茶の木そのものです。ここでは、写真を二枚並べて紹介しますが、幹が太く、普通の木のようになっているのが向島園さんのお茶の木(左)で、もう一方は周辺のお茶畑にあったもの(右)を撮ったものです。普通、お茶は挿し木で増やしますが、このようにしっかりと根のはった木として育てることにより、化学肥料がなく、無農薬でもきちんと収穫できるのだそう。ちなみにここでは20年以上前から無農薬での栽培を続けているとのこと。お茶の品種はここ静岡ではごく一般的な「やぶきた」です。今年は長雨と寒さのため、かなり収穫が遅れたそうですが、これが普通の茶園の場合、天候に関係なく八十八夜以降に収穫となると、安く買い叩かれてしまいます。それは、とりもなおさず私たち消費者が初物を有難がり、高くても買ってしまうからなのですが。ちなみにこちら向島園さんでは、収穫から製茶したものをほとんど自分たちで小売までするということで、今年のように収穫が遅れたということはあっても、価格面での影響はそれほど受けていなかったということです。

お茶の木の回りに生える雑草 茶園を見ていて気が付いたのは、季節ということもあるのでしょうが、モンシロチョウがそこかしこを飛び回っていたことです。お茶の木の脇に咲いていた花をめがけて数多くの蝶がやってきていました。無農薬のためなのか来るのは蝶だけではなく、蜘蛛なども多くいるようでした。それと、お茶の木周辺には写真のようにかなりの量の雑草が生えていました。草取りは人手に頼る他なく、かなりの重労働だそうで、せっせと取っていても、全部終わったと思ったら最初に取ったところにまた生えているというような感じになっているそうです。そこまでして無農薬・化学肥料なしにこだわるのには、先代から続くお茶作りのこだわりというものがあるということなのでしょう。

 今回は割と多めの粉末緑茶と粉末玄米茶を注文したもので、新茶を加工するのに時間がかかるとのことで、6月の始めまでずれ込んでしまいました。ただ、そこまで待っても手に入れたかったというのが正直なところです。向島園さんのホームページでは、この粉末緑茶をペットボトルに水を入れ、シェイクして飲む方法を説明しています。粉末茶は茶殻が出ないということの他、お茶の成分をすべて飲むことができるというメリットがありますが、これも無農薬ならではのことです。今、お茶の飲料は史上空前の出荷高を上げていますが、この粉末茶はペットボトル飲料の代替に十分なりうるのではないかという気がします。

 私たちがペットボトルのお茶をなぜ飲むかというと、普通のお茶の場合、例えば水筒に入れていくような事をすると、朝入れたものは昼にはもう色も味も酸化によって変わってしまうのに対し、ペットボトルのお茶には封を切るまでそれがないということがあります。ペットボトルのお茶にはお茶の成分の他にビタミンCが入っていることが多いですが、これはお茶の葉そのものに含まれている成分としてのビタミンCなのか、「酸化防止のため」という理由で添加物として含まれているのかというのはなかなか飲んでいるこちらにはわからないというのが実際のところです。煎れたてを飲めないというペットボトル飲料の宿命とはいえ、粉末緑茶の場合はティーバックとは違い、茶殻が出ませんので水やお湯とお茶を分けて持っていき、飲む直前に入れることでほとんどペットボトル飲料と同じ手軽さで、酸化していない本格的なお茶を楽しめます。今回は工場のラインの関係で購入できませんでしたが、一杯ずつのパックになっている商品も出ていますので、旅やレジャーにはこれを持っていけば給湯器のお湯だけでもおいしいお茶を楽しむことができます。一杯あたりのコストを考えても、1.5リットルのお茶飲料を箱で買うより、粉末茶を購入し、お水は今スーパーなどで提供されているアルカリイオン水などで楽しむ方が安上がりです。ペットボトルのお茶を主に飲んでいる人には、気にかけていい事であると思いますが。

縁側でいただいたお茶 今回の訪問をしてみて、お茶の産地の大変さというものを感じるとともに、お茶の産業はこれからどうなってしまうのかということも考えます。大手メーカーでは良質のお茶を集めるために、それ独自にブランドを持たない国内農家を契約農家として囲い込んだり、ブランド力を持った老舗でもサントリーの伊右衛門(京都・福寿園)やアサヒの若武者(静岡川根・丹野園)のように大資本と提携することで未来への活路を見出だそうとしています。今回訪れた向島園さんはそうした流れとは反対の方向で結果を出してきた茶園さんです。興味を持たれた方はぜひホームページにアクセスしてみてください。

 

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