インターネットの情報量というのは確かにたいしたものですが、まだまだ情報の中核をなすものは書籍です。そんな中、過去の事を如実に語ってくれるものが古本なのですね。このページでも紹介している竹中労さんの本は、一部を除けば古書でしか入手できないというのが現状です。というわけで、ここでは私の入手した様々な古書についての紹介をしながら、様々な古書を紹介して行こうと思います。
昨日の今日で、また別の古本屋さんに行ってきてしまいました(^^;)。まあ、私のページの更新状況を見ていただければわかりますとおり、書けるときに書いていかないと、いつまで経っても更新できませんのでどんどん行きます。
一冊の本から次に手に入れたいものがどんどん増えていくというのは仕方のないことかも知れませんが、竹中労さんを追いかけていくうちに寺島珠雄さんを知り、どういうわけか寺島さんの本の紹介をしてしまっている始末。以前寺島さんの著書『アナキズムのうちそとで』(編集工房ノア)を、一見マンガ中心の街道沿いにある古書店で800円でゲットしたことがあり、夢よもう一度と淡い期待をかけてその古書店を訪れてみたのでした。
で、上記の著書で寺島さんが何度も触れていたアナキズム詩人・岡本潤さんの増補新版の自伝を手に入れたというわけ。特に最後の一章は寺島さんの語る岡本潤私記が載っており、これで900円は安いと唸ってしまったのでした。この書店はマンガにCDが中心で、奥の方に古く価値の高そうな文芸関係の本や郷土資料、歴史関連の新刊書にはちゃんとパラフィン紙がかけられていてそれなりの値段が付いているのですが、そのどれでもない棚というのがあって、その棚が結構面白いんです。軟派硬派取り混ぜて、発掘する楽しみがあるなかでなぜかアナキズム関連の書籍もあったりするのです。先日の寺島さんの出版記念会で92歳という高齢にも関わらずお元気な様子だった詩人の伊藤信吉さんの『逆流の中の歌』(泰流社)なんて本もありました。しかしこの本については付いていた値段の半分以下で、静岡の古書市で入手していたのでこちらは購入しませんでしたが。
私はこのようにホームページで紹介していても、それほど気合いを入れて探し回ってはいないのですが、古本屋さんとの相性というのでしょうか、いろいろ興味深い本が見つかります。ただ、このペースで毎日のように古本屋さん巡りをやっていたらとてもやっていけませんので(^^;)、今後もできる範囲で気をつけておいて、面白いものを入手することがあったらここで紹介することにします。(99.10.1)
いきなり、ものすごい名前の本ですね(^^;)。この間無惨に壊されてしまった巨大な建物を持つ、静岡県富士宮市にある大石寺{たいせきじ}を管轄する日蓮正宗と創価学会との内紛に端を発した事情について書かれたのがこの本なのです。
先日オープンさせた竹中労さんのライブラリに何とか自分で見つけた本を載せようと、市内の古本屋さんを巡ってみたのですが、やはり一朝一夕というわけには行かず、全くの空振りでした。この本は、全国チェーン店化を強力に進めている『ブックオフ』で見つけました。この本屋さんは、一般の人から買い集めた本をとりあえず定価の半額で棚に並べ、一定期間売れないとどんな本でも100円の値を付けます。この本も100円の棚で見つけたのですよ。100円というのは魅力的な値段で、最近では缶ジュースも100円では買えません。ちょっとみたいなというようなものであれば、食指が動いてしまいます。
この本の著者である丸山実さんは、竹中労さんを知っている人にとっては知る人ぞ知る存在なのであります。このページの表紙で騒いでいますが、この11月末に刊行予定の劇画『黒旗水滸伝』が連載されていた月刊誌『現代の眼』の編集長が丸山実さんなのです。この本が出たのは1991年9月で、竹中労さんが亡くなった直後ですが、何か記載はないだろうかと読んでいったら、ありました。その部分をちょっと引用しましょう。
(引用開始)
筆者の知人たちは、一様に「なぜ創価学会に肩入れをするのか」と疑問を投げかけてきた。
筆者はその質問に答える代わりに、竹中労氏が書いた先記の本{引用者注・『仮面を剥ぐ』(幸洋出版)のこと}ならびに連作となっている『庶民烈伝』(全四巻・潮出版社 引用者注)を見せている。(中略)
竹中労氏のライフワークとなった『庶民烈伝』は、しいたげられた庶民が、創価学会という信仰組織のなかでどれだけ解放されてきたか、という視点。そして、日本及び日本人の「声なき声」の庶民史だが、これを読めばわかるように、窮民が救済される権利を誰も奪うことができないのである。
(引用終わり)
ちなみに、私は『仮面を剥ぐ』は持っていますが、『庶民烈伝』は揃っていません。こういう記述を見ると何とかして手に入れたいなあと言う思いが強くなってくるのですね。まあ、たったの100円でこういうものを手に入れようとするのはちょっと無謀であることはわかっているのですけどね(^^;)。しかし、たったの百円で一冊というのもなんなので、たまたま棚の隅っこに置かれていた『山田花子 自殺直前日記』(太田出版)と一緒に購入してきました。山田花子とは、吉本新喜劇の女の子ではないですよ。ガロなどに描いていた漫画家です。彼女は竹中労さんが応援した音楽グループ『たま』が好きだったとのこと。最後のところ近くに、好きなもの一覧というのが上がっていて、いろんな人や音楽、映画なんかが書いてありました。その一覧を見ていると、『たまの本』(小学館)に書かれている内容とついシンクロしているような感じがしました。でも彼女は『たまの本』は読んでなかったんだろうなとあてずっぽですが思います。彼女がもう少し自殺を先延ばしにして(亡くなったのは1992年5月)、自分で好きなことを発信できるインターネットを体験していたら、違った展開が開けていたのではと一瞬思ったのですが、もしかしたら電子掲示板で薬物を購入してしまったかも知れないとも思えてきます。人は彼女ほど極端ではないけど多くのことで悩み、苦しみます。その解決法として宗教にすがる人もいるのですが、一番許せないのはそうした庶民の心情を無視するかのごとく金儲けに走る一部の人たちですね。というわけで、全く無関係に見えたこの二冊の本は無関係ではない。そんなことを考えられるのも古本あさりの楽しさなんですよね(^^)。(99.9.29)
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